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第一章~アズ島の『消失伝説』について~
早朝。
朝の光が刺すように降り注ぐ。
シルミンはリリィを待っていた。
今日から4日間の調査。皆の都合がつかない中、あの子が興味があるからとついて来てくれることになった。
一人で行くことにならなくて良かった。
人手があると無いとでは大違い。そして何より移動中の話相手がいるのはありがたい。
「お待たせしました!」
駆けてきたリリィがぺこりと頭を下げる。礼儀の正しい子だ。
彼女はエルフの留学生で、東部の古代文化とエルフの古代文化との関係について研究している。だから、西部のアズ島に行くこの調査は彼女の研究にはあまり関係がない。それでも「お手伝いします」と言って来てくれるのだから、本当に助かる。
やって来た馬車に乗り、二人はアズ島に向かう。
ここからアズ島に行くには馬車と船を乗り継いでの一日仕事だ。
「シルミンさん、そのアズ島にある伝説はどんな物なんですか?」
馬車の中、隣に座ったリリィがこちらを向く。シルミンは読んでいた本を閉じ、膝の上に置いた。
「え、アズ島の伝説?」
「はい。シルミンさんの研究だから影人に関することだという事は想像がつくんですが」
「……あぁ。リリィはエルフだからあの伝説も知らないのね。人間には結構有名なのだけれど」
「グランス先生の言ってた『影人に消されちゃわないように』っていうのも気になるし。どんなお話なんです? まさか、ホラーっぽかったり……」
「そうよ? 地域に伝わる怪談みたいなモノね。もともとは西部の伝説だったんだけど、近代になって交通が便利になったせいで全国に広ま――」
そこまで言って、シルミンはリリィが青ざめているのに気付いた。
「……もしかして、怪談、苦手?」
「はい」
見れば肩が細かく震えている。筋金入りの怖がりらしい。
「や、やっぱり、聞かなくてい――」
震えるリリィを、ちょっといじめてみたくなる。
リリィが止めようとするのを遮って、シルミンはアズ島の『消失伝説』を語り始めた。
朝の光が刺すように降り注ぐ。
シルミンはリリィを待っていた。
今日から4日間の調査。皆の都合がつかない中、あの子が興味があるからとついて来てくれることになった。
一人で行くことにならなくて良かった。
人手があると無いとでは大違い。そして何より移動中の話相手がいるのはありがたい。
「お待たせしました!」
駆けてきたリリィがぺこりと頭を下げる。礼儀の正しい子だ。
彼女はエルフの留学生で、東部の古代文化とエルフの古代文化との関係について研究している。だから、西部のアズ島に行くこの調査は彼女の研究にはあまり関係がない。それでも「お手伝いします」と言って来てくれるのだから、本当に助かる。
やって来た馬車に乗り、二人はアズ島に向かう。
ここからアズ島に行くには馬車と船を乗り継いでの一日仕事だ。
「シルミンさん、そのアズ島にある伝説はどんな物なんですか?」
馬車の中、隣に座ったリリィがこちらを向く。シルミンは読んでいた本を閉じ、膝の上に置いた。
「え、アズ島の伝説?」
「はい。シルミンさんの研究だから影人に関することだという事は想像がつくんですが」
「……あぁ。リリィはエルフだからあの伝説も知らないのね。人間には結構有名なのだけれど」
「グランス先生の言ってた『影人に消されちゃわないように』っていうのも気になるし。どんなお話なんです? まさか、ホラーっぽかったり……」
「そうよ? 地域に伝わる怪談みたいなモノね。もともとは西部の伝説だったんだけど、近代になって交通が便利になったせいで全国に広ま――」
そこまで言って、シルミンはリリィが青ざめているのに気付いた。
「……もしかして、怪談、苦手?」
「はい」
見れば肩が細かく震えている。筋金入りの怖がりらしい。
「や、やっぱり、聞かなくてい――」
震えるリリィを、ちょっといじめてみたくなる。
リリィが止めようとするのを遮って、シルミンはアズ島の『消失伝説』を語り始めた。
更新日:2011-01-04 23:40:06