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研究背景~character&fields~

3時を示す時計を見上げ、シルミンは大きく伸びをする。
「さぁて、お茶の時間にしますか」
研究室の隅に置かれた冷蔵庫からコーヒーを取り出し、ドリッパーにセットする。
火の魔法で十分に熱くしたヤカンからお湯を注いで。
「コーヒーいる人~」
大部屋の皆に向けて尋ねる。手を上げるのはリンネル、ヴィーにクロノスとアニー……ぎりぎり足りるかな。
戸棚からカップを取り出し、コーヒーを注ぐ。
お茶菓子には、この間のリンネル達のイザルニ土産『紅葉饅』を。真っ赤な色が綺麗なお菓子だ。
紅葉饅を前に、少し首を捻ったシルミンはふと思いついて冷蔵庫からレモネーを出す。この黄色が赤の隣にあったら、もっと綺麗じゃない? さっぱりして口直しにも良いし。

大部屋に持って行くと、いつものように皆がわっと集まってくる。
「おぉ、紅葉饅やん! そういやリネン、イザルニ行った言うとったな」
クロノスが南部なまりの方言で言う。
「そうですよ。クロさん、紅葉饅好きなんですか?」
「そうやで。魔術学会で西の方行った時、偶然食ったんやけどな。それから西に行く時はいつも買うてるわ」
「クロは紅葉饅を食べている時、いつも焼酎を飲んでいる気がするのだけれど」
シルミンがクロノスの方に目線を向けて言う。
「西の方の焼酎と紅葉饅、意外と合うんやで」
え~、と皆がクロノスに疑いの目を向ける。
「あ、信じてへんなお前ら。ホンマやで、試してみ」
「はいはい。それじゃ、また今度試しましょう」
リンネルが半分茶化すように話を流す。
シルミンはふふ、と笑ったが、そんな時、ヴィーが紅葉饅に手をつけていない事に気がついた。
「ねぇ、ヴィー。お茶菓子は食べないの?」
「ちょっと、こういう甘過ぎるのは得意じゃなくて」
その言葉にぴくりと反応するクロノス。
「それじゃ、俺にちょうだいや」
言うと同時にヴィーの皿の紅葉饅を口に放り込む。
「うーん、これ食うてると焼酎飲みたくなるわ」
「……そういうことは、明日のゼミ発表用のプレゼン資料が完成してから言ったらどう?」
シルミンの言葉に、クロノスはたじたじになった。

更新日:2010-05-01 22:32:49

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