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金曜日の油断

僕と柿本君は、二人きりになった。
男同士の二人きりなんて、特に面白い状況でもなんでもないのだが、まぁ講師とは言え教師の末席にいるのだから、男子生徒と二人きりってのも普通って言えば普通なのだろう。

「ところで、君の幻視だけど、周囲に言わなきゃ、幻視王なんて呼ばれたりしなかったんじゃないか?」
「それはそうなんですけど、最初は言っちゃうじゃないですか?」
「まぁ、最初は幻視だなんて思わないだろうし、仕方がないか」
「最近は、昔ほど酷くないですけど、小学生の頃は大変だったんですから」
「あぁ、そりゃそうだろうな」
「……あの、先生は僕の幻視に詳しいみたいですけど]
「なんだ?」
「病院、いえ研究所で何してたんですか?」
「あぁ、ラボでは雑用かな、保険医の棗ちゃんにこき使われてた」
「え?そうなんですか」
「ちょっとした罰なんだけれど、ま、気にするなよ」
「どうして秘密なんですか?」
「そんなの決まってるだろ。どこの世界に、あなたの子供が人間じゃありません。でも、人間にする事は可能ですから入院してください。なんて言えるか?」
「そりゃそうですね」
「だから、秘密を知った君には」
「殺されたくありません」
「だから、殺したりしないってば」
「じゃ、どうするんですか?」
「仲間になってもらうかな」

僕は、ここでも勝手な判断で、何の権限も無く、彼を仲間にする事にしてしまった。
あぁ、バレたら怒られるんだろうな。
それとも委員会で聴聞会かな?聴聞会って面倒なんだよなー。
そんな事、関係無いだろ!って事まで聞かれるし。
僕は、ポケットから煙草を取り出し、そこにあるべき物のように口に咥えた。

「先生、ここは禁煙じゃ無いんですか?」

更新日:2010-06-15 03:30:12

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