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呆気にとられた。驚愕した。絶句して言葉が出なかった。
当り前と言えば当たり前だけど、棗ちゃんが、僕と同じ薬を紫に飲ませている事から、何となく予想はしていたけど、こうもあっさり断言されるとは思わなかったのだ。
人間の中に突然変異のように生まれる人間もどき。
血縁関係も、遺伝も無関係に発生するミュータントのような存在。
人間から何かが欠落した存在で、人間よりも優れた何かが代わりに与えられる。
だからと言って、万能でも無く、寿命も普通。
そんな中途半端な存在になっていると思わなかった。
いや、思いたくなかったと言うのが正しいだろう。

「ところで、棗ちゃん。紫は、妹は、何が人間に足りない?」
「一般常識」
「ぶ、ぶっ殺す!今、物凄く、棗ちゃんを殺したいと殺意が燃え上がってる」
「ふ、冗談だ、冗談」
「言っていい冗談と悪い冗談があるだろうが」
「そこまで怒るな」
「紫が一般常識に疎いのは知ってるよ。それが人間もどきの照明ならば、ほとんどの若者がん人間じゃなくなってるだろうが」
「だから、冗談だって言ってるだろ、由良君」
「真面目に答えないと、僕達の友情は、今ここで一瞬にして終わるからな」
「私達に友情があるとは知らなかったが、まぁ良いだろ、教えてあげよう。紫ちゃんは、君の血液を欲している」
「は?」
「だから、君の血液を欲っする衝動があるんだよ。生命維持の源としてと言っても良いかな?」
「・・・・・・」
「なんだ?分らないのか?性的な衝動は、君達の感情の部分だろうけど、君の体液なら何でも良い、特に血液に近ければ近いほど、紫ちゃんは、それを飲んで生命を維持するようになっている」
「つまり僕の血を飲むって事か?」
「血じゃ無くても良いって言っただろ?精液だって良いんだよ」
「えー、じゃぁ、何、紫が僕の精液を飲んで生きてるって事?」

素っ頓狂な声を出して驚く僕の腹に、昨夜の紫とは比べ物にならないパンチが思い切り入った。

更新日:2010-05-29 06:56:49

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