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5-5/だって混沌体質だもん2010
ちっちゃ可愛いミナミコアリクイを鞄に押し込み、一生懸命血化粧を拭っている悪霊を引き連れ、ケイトの後ろをついて歩く。
デートっぽい。やっぱこの光景、傍から見たらデートなのかなぁ……。
……あ、誤解される前にいっておくけど、今回のコレは日帰りだぞ。泊り掛けではない。っていうか、泊まりだったら流石の俺もこうまで平常心ではいられない。恋仲ではないとはいえ、いや、そうであるからこそ、クラスメートの女子と二人っきりで泊まりは流石にヤバい。
「ネェネェ。」
「ん? なんだ華子?」
呼ばれた気がして振り返るが、華子は未だ落ちない頬の血糊と格闘していた。
空耳かよ、俺が恥ずかしいじゃないか。
「タロ君タロ君、こっちこっち!」
バツの悪い顔でまた前を向くと、ケイトが手を招いて俺を呼んでいるところだった。なんだ、お前か。空耳じゃなくて良かった。
誘われるまま、二荒山神社の裏手へと進んでいく。
……おいおい?
この辺は流石に、一観光客に過ぎない俺たちは入っちゃ拙いんじゃないのか……?
不安を覚えて周囲を見渡すが、誰も俺たちには興味がないようで、各々にこの神社の荘厳な佇まいに溜息を漏らしているばかりだった。
……あとで怒られるのは嫌だが、どんどん先に進んでしまうケイトを放っておくわけにもいかない。ちょっと目を離した隙に、後姿も随分小さくなっているし。さっさと追いかけよう。
えーっと、地図によるとこっちの方向には何もないはず……いや、ちょっと遠いが二荒山神社の別宮の滝尾神社があるな。そこに行きたいならちゃんと整備された道があるだろうに、山道を突っ切ろうとはどういう根性だ?
野を越え山を越え滝も越えて行くくらいなら、普通に歩道を歩こうぜ!
「ケイト! 待てよ!」
「こっちこっち!」
「こっ、こらタロー! 急に走るでないっ、揺れる……!」
「太郎さーん! 待ってくださいーっ!」
悪霊と宇宙人の言葉には耳を貸さず、小走りに追いかける。しかしその差は、一向に縮まらなかった。
くっ、意外と早いじゃないか……!
かつては怒れる風紀委員長として、俺の通っていた中学校を支配していただけの事はある。純粋な身体能力なら俺と互角か、それ以上だ。……それでいて勉強も出来るなんて、嫉妬するぜ!
ケイトを追う俺は、何時しかちょっとだけ本気で走り始めていた。ケイトも、こっちこっちと繰り返しながら、最初は山道を走る田舎の子供風だったのが、やがて木々の隙間を縫う肉食獣のように駆けている。ホント、全身に目玉がついているかのように、密集する木々に少しもぶつかる気配がない。……マジ獣か、アイツは!
ちっちゃ可愛いミナミコアリクイを鞄に押し込み、一生懸命血化粧を拭っている悪霊を引き連れ、ケイトの後ろをついて歩く。
デートっぽい。やっぱこの光景、傍から見たらデートなのかなぁ……。
……あ、誤解される前にいっておくけど、今回のコレは日帰りだぞ。泊り掛けではない。っていうか、泊まりだったら流石の俺もこうまで平常心ではいられない。恋仲ではないとはいえ、いや、そうであるからこそ、クラスメートの女子と二人っきりで泊まりは流石にヤバい。
「ネェネェ。」
「ん? なんだ華子?」
呼ばれた気がして振り返るが、華子は未だ落ちない頬の血糊と格闘していた。
空耳かよ、俺が恥ずかしいじゃないか。
「タロ君タロ君、こっちこっち!」
バツの悪い顔でまた前を向くと、ケイトが手を招いて俺を呼んでいるところだった。なんだ、お前か。空耳じゃなくて良かった。
誘われるまま、二荒山神社の裏手へと進んでいく。
……おいおい?
この辺は流石に、一観光客に過ぎない俺たちは入っちゃ拙いんじゃないのか……?
不安を覚えて周囲を見渡すが、誰も俺たちには興味がないようで、各々にこの神社の荘厳な佇まいに溜息を漏らしているばかりだった。
……あとで怒られるのは嫌だが、どんどん先に進んでしまうケイトを放っておくわけにもいかない。ちょっと目を離した隙に、後姿も随分小さくなっているし。さっさと追いかけよう。
えーっと、地図によるとこっちの方向には何もないはず……いや、ちょっと遠いが二荒山神社の別宮の滝尾神社があるな。そこに行きたいならちゃんと整備された道があるだろうに、山道を突っ切ろうとはどういう根性だ?
野を越え山を越え滝も越えて行くくらいなら、普通に歩道を歩こうぜ!
「ケイト! 待てよ!」
「こっちこっち!」
「こっ、こらタロー! 急に走るでないっ、揺れる……!」
「太郎さーん! 待ってくださいーっ!」
悪霊と宇宙人の言葉には耳を貸さず、小走りに追いかける。しかしその差は、一向に縮まらなかった。
くっ、意外と早いじゃないか……!
かつては怒れる風紀委員長として、俺の通っていた中学校を支配していただけの事はある。純粋な身体能力なら俺と互角か、それ以上だ。……それでいて勉強も出来るなんて、嫉妬するぜ!
ケイトを追う俺は、何時しかちょっとだけ本気で走り始めていた。ケイトも、こっちこっちと繰り返しながら、最初は山道を走る田舎の子供風だったのが、やがて木々の隙間を縫う肉食獣のように駆けている。ホント、全身に目玉がついているかのように、密集する木々に少しもぶつかる気配がない。……マジ獣か、アイツは!
更新日:2010-05-01 12:21:18