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おっさんの遺言



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店は開放しておいてくれ。
町のもんたちが集まれるように。
わらっちゃがいつでも、来られるように。
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オッサンは、そう言っていたけれど……。

ごめんね、おっさん。それは駄目になったよ。
オッサンの身内のひとがね、管理していけないって。
水道光熱費、払っていけないって。
固定資産税も、払えないって。

身内の人にそういわれてしまったら、私たちには、どうしようもない。
私たちが払っていきます、なんて……言えるわけが無い。
言える立場じゃないもの。

家のほうには私たち、入っていなかったから、
店にあるものを、片付けて、おうちにもって帰ります。

鍵をきっちり閉めて、あの家も、店も、崩壊して、
いずれ廃墟になっていくんだろうな……。

……私たちは私たちで、自分の家でやっていくよ。
引きずらなくて、かえってよかったのかもしれない。

みんなの溜まり場だったのにね……。

オッサン、生命保険に入っておけば、きっと少しは違ったんだぜ?
勝手に解約、しちまっててよう……。

あの人たちは、オッサンの別れた奥さんと、その連れ合いと、
仲良く平和にやっていくと思うよ?

私たちは私たち家族で、仲良く平和にやっていこうと思う。
オッサンのこと、思い出にして、暮らしていくよ。

楽しかったね、幸せだったね、ありがとうって。

オッサンの本当の家族は、どう思っているのかな……。

そしてオッサンも。

別れた奥さんが、つれあいと町内に引越してきたとき、オッサン、荒れたね~。

もう終わったんだからいいじゃん。
それがなかったら、うちらとこうやって、おられんかってんよ?
いま、うちらとおって、幸せやろ? もう許したれや。

そう言ってわたし、おっさんのこと宥めたなぁ……。オッサンと酒飲みながら。


おかんはこの間 『おっさん連れて、パチンコしてくる』 っつって、パチ屋にいってたよ?
500円ヒットで2万勝って、おっさんの息子に渡してたよ。


パチンコ屋はいいよな。何も考えずにぼうっと打っていられるから。
お父さんのときもそうだった。不謹慎だと人は思っていただろうけど、
だって、ふたりともパチンコだいすきだったんだもん。

お父さんのお見舞い帰りに、いつも箱山積みにして泣いていたわたしを、
周りの人はどう思っていただろう。そしてそういう時に限って、また、出るんだよなぁ。
知っている人は、知っていた。だけど声なんか、かけてこなかった。

……怖いもんな。そんな客。
いや、知っているからこそ、そっとしておいてくれたのだろう。
ありがたいことだよ。

おかんは今日、しゃかりきになって、自分の家の掃除をしていたよ。
わたしも少し、片付けないとな……。




更新日:2010-05-01 13:03:18

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