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第4話 オオカミVSアルマジロ

「仕方ない…!勝負だ!」
2人の戦いが今始まった。
先手は充。
前足に生えている爪でアルマジロの腹の部分を攻撃する。
アルマジロは咄嗟にかわした。
「今度はこっちの番だ!」
アルマジロは爪を立てて、地面に突き刺そうとする…が、コンクリートなため、硬くて突き刺すことが出来ない。
「おい、どうした?攻撃失敗か?」
充は余裕の笑みを浮かべた。
「(…くっ!そうだった…、ここはコンクリートだった…。ここだったら俺の能力生かすこと出来ないじゃないか…。だったら…)こうなったら場所替えだ!」
アルマジロはそう言うと、その場を走り去ろうとする。
「逃がすかっ!」
充はアルマジロを追いかける。
そこに遅れて武が到着した。
「やっと追いついた~!」
「武、走るぞ!犯人が逃げた!」
「え~!また走るの~!?」
「お前もクマに変身しろ!そしたら速く走れるだろ!」
「分かったよ…!変身すれば良いんでしょ!変身すれば!」
武は少し投げやりになってクマに変身し始める。
「で、その犯人はどこに逃げたの?」
武は走りながら充に尋ねる。
「…いた!あそこだ!」
充は犯人を見つけ、顎で示した。
そこはさっき2人が来ることを予想していた空き地だ。
その空き地の真ん中に犯人であるアルマジロが立っていた。
「ここの町にはアニマルズが2人もいるのか…」
アルマジロは小声で呟く。
「おい犯人!続きと行くぞ!」
「ふん!土の地面にいることでもうお前達の負けだ!こっちから行くぞ!」
するとアルマジロはモグラのように地面を掘り始めた。
数秒でアルマジロは姿を消す。
「どこだ…、どこに隠れた…!?」
2人は周りを見渡し始める。
「ここだ!」
声と共に、アルマジロが武の左斜め後ろから現れ、爪で引っかいた。
「ぐあっ!」
「武!」
充はアルマジロを攻撃しようとするが、また地面に隠れてしまった。
「次はお前だ!オオカミ!」
「(落ち着け…落ち着くんだ…)」
「喰らえ!」
アルマジロが後ろから現れ、攻撃しようとした。
だが充にはそれが見えていた。
「ここだ!」
「ぐああっ!」
充は後ろ足でアルマジロを蹴り飛ばした。
「何で…俺の居場所が…!?」
倒れながら、アルマジロは尋ねる。
アルマジロの姿は徐々に少年の姿に変わっていた。
少し長髪で、金髪が少しかかっている。
「最初に戦った時、念のため匂いを嗅いだ。嗅覚が異常に発達しているからな。だから地面の中でもお前の居場所がすぐに分かった」
「くっ…流石はオオカミだな…」
「それに俺はオオカミって名前じゃない。尾崎充だ。お前の名前は?」
「…沼田…沼田順平…」

充と順平は空き地の近くにある自販機のベンチに座っていた。
「ラッキー!当たりが出て1本分浮いたよ~!」
武がジュースを3人分買う。
「はい」
武は充と順平にジュースを渡す。
「あ…ありがと…」
順平は武からジュースを受け取り、飲み始めた。
「うまいだろ?オイラのお気に入りなんだ」
「…ああ」
順平は静かに頷く。
「順平…。話戻るけど、何でこんなことを?」
充は真剣な顔をして順平に尋ねる。
「…実は俺…、孤児院…抜け出してさ…」
「何で?」
今度は武が尋ねた。
「正体がばれたんだ…。ばれた以上もうここにはいられないと思って…あちこち歩き回っている」
「だからって…、何で盗みを働いた?」
「深夜の町を歩いている時、酔っ払いのサラリーマン達を見てふと思ったんだ…。どうせこいつらは働いて得た金をほとんど酒に使ってるんだろうな…て。1銭もない俺にとっちゃ物凄く腹立たしいことだった…。俺が金に困っているのに、何無駄なことに使っているんだ…てね。そこで俺は盗みを働いて、現在に至るってわけだ…」
順平は想いだすように話す。
「でも、そう考えても盗みは絶対にいけないことだ…。それだけは約束しろ」
「分かってるよ。もう盗みはしない…。バイトして自分で金を稼ぐ事にするよ。じゃあな、同志に会えて色々楽しかったよ」
順平はそう言うと、ベンチから立ち、その場を立ち去ろうとした。
「待てよ」
充の言葉に順平は振り返る。
「何だよ」
「一緒に住まないか?」
「あ、それ良いね。順平、3人で一緒に住もうよ~」
「…せっかくだけど遠慮しとくよ…。俺、1人が好きだから…」
「そうか。じゃあもう言わない…またな」
「じゃあね」
充と武は順平が見えなくなるまで、見送る。
「じゃあ俺達も帰るか?」
「そうだね、じゃあ帰ろう」
2人も歩き始め、孤児院へ帰っていった。

あれから順平の姿を見ていない。
おそらく色んなところを旅してるんだろう。
「充~、何してるんだ?」
教室の窓を眺めている充の所に武が現れた。
「順平、元気かなって…」
「きっと元気だよ」
「…そうだな」
するとチャイムが鳴り始めた。
またいつも通りの生活が始まる。

更新日:2010-11-13 14:48:51

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