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再会と魔獣

自然公園についた。
・・・普段の新緑の色が灰色に変わっている。

キーン!という金属かなにかが弾かれた音がした。
この時間が止まった世界で音が鳴る自体珍しい。
もしかして・・・。

音が鳴った場所に走る。

「グフフ・・・」


声・・・?おまけに人の声でない感じだ。
慎重な足取りに変わる。
木の陰から覗き見る。

そこにはティナの姿があった!でも・・・、倒れている。
それに凄い傷だ・・・。
ダメだ、駆け寄るわけにはいかない。様子からして何かいる。
僕は駆け寄りたい気持ちを最大限に抑えて観察を続ける。

「グフフ、流石の召喚獣も契約者なしでは本領を
 発揮できないようだな・・・。」

さっき聞いた声だ。
僕はその声の正体を見ようとちょっとだけ身を木から乗り出そうとした・・・、
そのとき、足元にあったコーヒーの空き缶を蹴っ飛ばしてしまった!
その場に空き缶の音が響く・・・。
僕は慌てて木の陰に隠れるが遅かった。

「そこにいるのは誰だぁ!」

次の瞬間凄まじい閃光を放つ弾がこっちに飛んできた!
それを回避しようと木から全速力で離れる。
閃光を放つ弾の着弾点が小規模な爆発を起こして僕の体は宙を舞う。
地面に叩きつけられつつも、着弾点を見ると
クレーターのようになっている・・・。なんていう威力なんだ・・・。
急いで体を起こすと倒れていたティナがこちらを
虚ろな目で見ながら僕の名前を呟く。
急いで傷ついたティナのもとに駆け寄る。
遠くで見るときよりもずっと傷が酷いことがわかった。

「フフ・・・、人間か。その召喚獣を知っているようだな?」

敵と思われる姿を確認する・・・・。
そこには宙に浮遊し、体から炎を放つ蜘蛛の化け物みたいな姿をしていた。
その圧倒的な威圧感と恐怖に僕は押しつぶされそうになる。
でも、今はティナをどうにかしないといけない・・・。
だけどティナは傷を負っているし、俊敏に動けるような状況じゃない。
それにどう考えても普通の人間である僕が、あの蜘蛛の化け物を
そうにか出来る訳でない。・・・ならどうするんだ・・・?

「まぁいい。お前らを二人とも葬ってやるわ・・・」

蜘蛛の化け物は両手に見えるものを掲げる。
するとさっきの閃光を帯びた弾がどんどん大きくなっていく。
コイツ、全て吹っ飛ばすつもりなのか!?
今、全速力で逃げてもあの大きさだ・・・。
さっき僕に飛んできた大きさの20倍は予想できる。

「シンさん・・・、逃げて・・・・、ください」

えっ・・・!?
ティナは僕の手を握って必死に訴えてくる。
でも、逃げても無駄なことは分かっているはず・・・。

「私が勝手にあなたの前に現れて・・・、あなたを巻き込んじゃったんです。
 私が爆発を最小限にするようにするから・・・、シンさんは逃げてほしいんです・・・、
 少しでも・・・長く生きてほしいですから」

傷のせいなのだろうか、声が痛々しく伝わってくる。
そしてティナはふらつきながらも立ち上がる。
腰につけてあった剣を傷だらけの手で抜き取って、
それを立っているのがやっとの自分の体を支える助けにしながら。
ティナの目には涙が浮かんでいた。
多分、僕の予測でしかないけれど、ティナはこのことを恐れて
契約のことを僕に言わなかったのかもしれない。

ここで逃げても世界は混沌に包まれて終わる。
それまでの時間を過ごせっていうことなのか?
でも・・・、その時間は一人の女の子を死なせてしまった罪悪感と
混沌につつまれる恐怖で一杯になるに違いない。
ここで逃げても・・・今よりもっと苦しいかもしれない。
ならどうするんだろう・・・?

答えは一つ。
決まっていた。でも、この選択肢を選べば・・・、
僕は死ぬかもしれない。危険もたくさんある。
でも・・・、一人を犠牲にするよりはずっといい。
それに・・・、僕は――

「ティナ!!」

僕の大きな呼びかけにティナは驚いたように顔を向ける。

「契約するんだっ!!今すぐ!」

ティナはでも・・・。といいながら戸惑っている。

「いいから早くするんだ!!」

「コレで終わりだっ!二人して冥土に行くがいいっ」
蜘蛛の化け物の手から閃光を放つ弾が放たれた・・・。

更新日:2010-03-30 17:18:51

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