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小説

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「苦しまぎれね」

 次の一手をメイはそう評した。
 しかし、時間が経過するにつれてメイの得意げな顔がくもっていく。

「ちょ、ちょっと待って」
「どうした、ずいぶんと待ったが多くなってきたな。先程までのイキオイは終わりか?……いや、時間をかけて勝てるのならそれでも構わないがな」
「キーッ!! まだこれからよ!」

「本当にそれで良いのか?」
「ちょ、ちょっと待って。……いいえ、やっぱりコッチよ」
「チェックメイト」
「えっそんな手が……ああっ」

 メイは頭を抱える。

「どうやら、私の勝ちのようだな」

 メイのキングはもうどこへも逃げられなかった。

「うるさいわね、今のは負けたうちに入らないわ! この程度で私より強いなんて思わないで頂戴。もう1回よもう1回!」

 昔と同じセリフに、思わず吹き出してしまう。
 おかげでメイの目がさらにつり上がった。

「す、すまない。昔を思い出してしまって……くくっ」

 真っ赤になって怒る姿は、さらに昔と重なって笑いが止まらなくなる。

「……そうだ、くやし泣きはしないのか。昔のように」
「~~~~~~~~!!!」
「ぬおお!」

 わめきちらした後はムチが飛んでくる。これも昔と同じだ。

「それより再戦するのだろう? そんなに興奮していては私がまた勝つぞ」
「―――私が勝つに決まっているでしょう」

 ぐっと口をむすぶと、ソファに戻りコマを並び始める。本当に、昔のままのメイだ。
 私も自分の駒を並べ直しながら、真剣にチェスボードをニラんでいるメイを見る。

「……私が強くなったのもメイのおかげだな」

 メイは不思議そうに顔を上げた。

「そばにいてくり返し対戦してくれたおかげだ。キミがふいに考えさせられる手を放ってきて、負けられないと思い必死で勉強した。メイと切磋琢磨した日々があるから、今の私があるのだ」

 メイは視線をそらして目を伏せる。

「……私だって、レイジに勝つために強くなったのだわ。他の人間に勝ったところでその勝利に意味はないもの」
「ふっ、どうあろうとも私を負かさないといけないらしいな」
「当たり前じゃない。さあ、次が本番よ!」

 指を突きつけるメイに、私は余裕たっぷりに笑い返す。

「再び返り討ちにしてやるとも」


 こうして互いを高めあって行くのだろう。これからも、ずっと。

更新日:2010-03-26 16:04:36