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§(7),練習

 夏休みの最後、二学期に入る一週間前から、クラスは文化祭の準備に入った。
バカ担任は練習を見に来ることも無く、俺たちを放置した。
まあ、どうのこうの言われないから、その方が楽だったけど。
 頻繁に連絡を取り合うので、みんな仲良くなった。
特に小島クンとは、このときかなり接近したと思う。
始め、俺と山上にとって小島クンはまったく異質な感じだった。
でも、話し始めてから、徐々に小島クンとは妙に気が合うような感じがし始めていた。
 女子は女子同士で、親しく名前を呼び合っていた。
ミユキも“ミユキ!”と呼ばれていた。
俺も一度でいいから“ミユキ!”と呼んでみたかった。
でも、ダメ。
柏岐さんは柏岐さんで、ミユキとかミユキちゃんとは、どうしても言えなかった。
他の男子は、みんな柏岐さんと呼んでいたから。
ホント、冗談でも言ってみたかったんだけど、やっぱり言えなかった。
そりゃ、当然でしょ、ガキだもん。
 舞台に上がるキャストは集まって練習する。
頻繁に連絡を取り合い、電話も掛ける。
俺は委員長、ミユキは副委員長。
次第にお互い話す回数が増える。
 ミユキとは何回も話した。
学校にいるときは、ちょっとした会話。
それは、みんながいるから。
電話で連絡を取るときは、もう少し親密に。
 文化祭以外のことも色々話した。
好きな音楽、面白かった映画、父親が厳しくって門限は日が暮れるまでとか色々。
俺の中でミユキの情報がドンドン蓄積されて行く。
それは、ミユキも同じこと。



更新日:2010-04-29 19:35:40

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過ぎ去った季節の中に  ~1,教室の見える風景~