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小説

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1. クーさん

午前中だというのに気温32度。
きょうは誰かの誕生日パーティに行くことになっているので、きのうの夕方拾い集めた貝殻でちょっとしたプレゼントを作っている。
クーさんからのメールでは、誰の誕生日なのかは知らされていなかった。

クーさんと出会ったのは、先月の初め、初夏の海辺だった。
クーさんは、ガラスみたいなブルーの目をした少年のような人で、麦わら帽子をかぶっていた。でもけっこう大人なのだと思う。年齢は訊いたことがないのでわからない。
アイスキャンディーの旗を立てた自転車に乗ってやって来た。
アイスキャンディーを買いに来る子供がクーさんと呼んでいたので、なんとなくクーさんと呼ぶようになったのだが、ニックネームなのかなまえなのかはわからない。
僕はアイスキャンディーを買って、すぐそばのガードレールに腰を掛けて、ぼんやり海を眺めながらそれを齧っていた。
この辺りは海水浴場ではないので、それほどの賑わいではない。
クーさんは、ヒマそうに箱から一本アイスキャンディーを取り出して、僕の傍らに腰を掛けてキャンディーを齧った。
「この箱にいい絵が描けないかなぁ?」クーさんは自転車の荷台に着けた白いアイスキャンディーの箱を指して言った。
僕は時々絵を描く、たいていは晴れた海がメインの絵だ。そしてかなり自己満足な出来栄えの絵である。ただ夏の絵が描きたくなるのだ。
そんな絵をこの白い箱に描いてみてもいいかなと思った。
「海の絵がいいよ。かき氷の旗だって波の柄だからね。」と言ってみた。
クーさんは、目の前の海を指して「あの水平線がいいかもしれないな。」と言った。
「そうだ、この景色を書いてみよう。」

更新日:2008-11-27 11:31:43