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エスケープ

高3の秋と言えば「進路」。


それは今後の人生を左右させる決断でもある。

いつもお気楽な6人もそれなりに悩み多き秋を迎えている…はず。



朝の部室


 「悠理、あんたはうちの体育学科よね?」

 「もっちろん!実技だけでも入れてくれるのはあそこだけだからさ」

 「可憐はデザイン科だろ?」

 「ま・ね。宝石屋の娘だからね。でもデザイン科って出会い的には

  イマイチなのよねぇ」

 「その点僕の国際コミュニケーション学科は恵まれてるよ」


 バタン


部室に響く不機嫌なドアの音。



 「あら野梨子は?」

 「・・・頭痛がするようで、休みですよ」

 「昨日は元気そうだったのに。。。大丈夫かしら?」



可憐に返事もせず清四郎はかばんから出した紙に、

何か黙々と書き始めた。


 「あ、それって進路報告書だよね。清四郎まだだったんだ・・・え?」 

のぞきこんだ美童がスットンキョウな声を上げた。

 「ケンブリッジ???」

 「ええっ?」残る二人ものぞきこむ。

 「ええ。悩んだんですけど・・・ここなら一石二鳥なんですよ」


 (一石二鳥) 

と、思いながらも3人はあえて質問しない。

清四郎の説明はいつも長い。



 「はあぁ。日本じゃないなんて・・・倶楽部もバラバラね」 

深いため息をついた後、可憐はガバッと立ち上がり清四郎に詰め寄った。


 「清四郎!野梨子は?まさか・・・連れて行くとか?この学校じゃ卒業と

  同時に婚約なんてザラだし・・・」


キンコーンカンコーン♪


 「あ、始業の鐘ですよ。そうだ・・・職員室にも寄って、と・・・」

素早く後始末。取り付く島もない。












更新日:2010-06-11 15:33:29

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