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可憐の半開きのまぶたがグッと上がった。

 「えっ?どこがって。。。言われてもねぇ」


 「私、なんだか何かが急に変化してしまうのがこわくて。
 
  今のまま・・・静かな時間のまま・・・ではいられないのかしら?」


じっと野梨子を見据えて、グラスを回す。氷のきれいな音が鳴る。



 「ふーん・・・野梨子はまだ落ちてないからこわいのかしら?

  あたしが楽しいのはね、あっ落ちちゃったんだって気が付いてからだわ。

  もうそこからはカレシ一色・・・」


 「・・・カレシ」 野梨子にとってはうまく消化できない言葉だ。



 「そうねぇ、あんたたちみたいな幼なじみってやっかいね。

  静かな時間って・・・ふふ、老夫婦みたい」


 「ちょっと!可憐」 野梨子はにらみつけた。


 「あっ、きたわ。ごめん。。。もしもしーはあい可憐でーす」


一段高い声で携帯に出る。完全に意識は電話の向こうに飛んでいる。



野梨子はあきらめてベッドに戻った。

半分ずり落ちた悠理の布団を直してやる。


 「まだ落ちてない・・・・・・」

可憐のことばがいつまでも耳に残った。


更新日:2010-06-10 12:22:43

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