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お・と・し・ご・ろ

松竹梅時宗は、食卓で愛妻千秋ちゃんとお茶漬けタイム。


 「ズッ、ズズズッ、ズゥ、ズゥウウウ」

千秋の冷ややかな視線に気付かない時宗。

 「ちょっと!時宗ちゃんっ!その音やめてっ!!!」

 「えっ?ああ・・・失敬失敬」


警視総監形無し。。。怒られながらも時宗はどこかうれしげだ。


 「そのぅ、なんだ、魅録はどうしたんだ?2,3日こっちに

  いられると聞いたような気がするが・・・姿が見えんな」


千秋は茶碗の底に残ったご飯粒を箸にのせつつ、のんきな夫を
確認する。

夫は息子の恋愛事情など無関心。

だけど・・・
息子たちがそろそろお年頃だってことぐらい気付かせたい。


 「デートで忙しいんじゃない?」


思わぬ返答に時宗は箸を止めて妻を見つめた。


 「・・・デ、デート?はは、ははは。千秋ちゃん、魅録のとこに

  出入りしてる連中はむさくるしーいのばっかっゴホッゴホッ!

  ゴッホ・・・」

喉にはり付いた海苔にむせる。


 (やっぱりね…)


千秋はフンと鼻で笑った後、「ごちそーさまー」と立ち上がった。

一人食卓に残された時宗。


 (?・・・ヒマさえあれば車かバイクをいじっとるし・・・

  それゆえに友達は男どもばかり・・・学校のことはよく

  知らんが。そういえばあいついくつになったんだ?え~っと)



今日はオフ。

しかしあまりいつまでも部屋着のままでウロウロしていると、
千秋のご機嫌を損ねる。

それもそのはず、上に羽織っているのは時宗愛する「どてら」
なるもの。

しかもかなり年季の入った代物だ。

着る物に気を遣う時宗だったが、何を言われてもこれだけは
手放さない。

更新日:2011-08-16 22:36:25

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