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第六試合 Oath~元エースの約束VS擬似プロ野球高校~

「起きろーーーー!!朝だぞーーー!!」
 ある朝、そう叫ぶ一人の人物が居ました。
 黒髪短髪で、制服を着た齢17歳くらい少年でした。
 そんな少年が居るのは机とベッドが設置されてある部屋のような場所でした。
 そして、その少年の視線の先、ベッドの上には、
「スゥー・・・スウ・・・」
 布団に包まれながら幸せそうな寝顔と寝息を吐きながら眠っている一人の少女が居ました。
「オイ!!」
 少年はもう一度、寝ている少女に向かって言い叫びました。
 しかし、少女は目を覚ますどころか、その少年の声に微動だにしない様子で眠っていました。
 そんな少女の姿に少年は一回、呆れたような溜息を吐きました。
 そして――――――――
「いい加減に起きやがれーーー!!!春香ーーー!!」
 その少女の名を思いっ切り叫びました。
「・・・・ふにゃ?」
 その少年の声がやっと聞こえたのか、春香と呼ばれた少女は布団の中でモゾモゾと身体を動かすと、可愛らしい声を上げ、目を擦りながら起き上りました。
 しかし、春香は少年に視線を向けたのと同時に・・・
「ふぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁーーーー!!!お化けーーーーー!!!」
 そう大声で叫ぶと、目の前にあった鞄や筆箱やらをその少年に向かって思いっ切り投げ付けました。
「ちょ、ちょっと!!待て!!物・・・物は投げるな!!は・・・春・・・!!」
 少年は慌てた様子で必死で停止するように春香に言い叫びました。だが、その少年の声に春香は全く聞こえていませんでした。
 やがて、『ドカッ!』と言う何かに当たった音が聞こえた後、少年は頭を抑えたまま、その場で蹲ってしまいました。

「本当に・・・・・ゴメン!!俊矢君!!」
 春香は手合わせながら先程、物を投げた少年の名を言いながら謝罪しました。
 そんな春香の今の服装はセーラー服を着用していました。
「全く、何回言ったらその癖直るんだよ!!」
 そう言った俊矢と呼ばれた少年は続けるように、
『その寝ぼけて、物を投げる癖!!』
 謝罪する春香に言いました。
「しかも、今日は試合だって言うのに・・・・・その前にボロボロになりそうだわ!!」
 俊矢は呆れた表情を浮かべながら春香に言いました。
 そんな俊矢のおでこにはまだ真新しい絆創膏が1枚、貼られていました。
―今朝、いつも通りに春香を迎えに自宅に俊矢はやって来ました。しかし、当然の事のように春香はまだ爆睡中であったのを春香の母親から聞き、俊矢は春香を起こす為に部屋に向かったのでした。
 そして、部屋の中に入った途端に前回よりも圧倒的に増え、鼓膜が破れるくらいの大音量アラームが鳴り響く、目覚まし時計をやっとの思いで止めた俊矢は、それでも起きる気配すら見せない春香に呆れつつ、起こしてやったのでした。
 しかし、結末は『寝ぼけられた春香に物を投げられてしまう』という散々な末路を辿ったのでした。
「ほんーーーーとうにゴメン!!」
 春香は手を俊矢の前に会わせて、再び謝罪しました。
 必死で謝罪する春香に俊矢は『やれやれ・・』と言うように溜息を洩らしました。
「ったく、さっさと行くぞ」
 俊矢は春香を見ながら言いました。
「・・・・うん」
 春香は頷くと、俊矢の後を追うように走って行きました。
 藤井付属高校野球部のグラウンドに向かうように、セーラー服のスカートを翻しながら・・・・

「皆、集まったようじゃな」
 そう言って、俊矢達を見る人物が居ました。年齢にして50代後半の男性。彼は藤井付属高校野球部の監督でした。
 そして、俊矢達が今居るのは球場内にあるベンチの中でした。
「それでは、今から2回戦・・・・・・武藤高校との試合が始まる。皆、頑張ってくれ!!」
 監督がそう言うと、皆は『はい!!』と返事をしました。
「じゃあー、皆で円陣組むか?」
 突然、そんな事を言ってきた人物が居ました。
 青色の髪が特徴的な3年生の少年でした。
「おっ!?いいね!!やろうぜ海堂!!」
 少年の名を言いながら、その提案を二つ返事で飲んだ人物が居りました。
 笑顔を絶やさない少年で、海堂と呼ばれた少年と同学年である坂田でした。
 そして、それに釣られるように他のメンバーも賛同し、
「僕もやるーーーー!!」
 春香・・・・正も、海堂の提案に賛同しました。
「俊矢君もやるよね?」
 春香はそう言いながら俊矢を見ました。
「まぁーな。坂田先輩達がやるとなれば後輩の俺には断るような権限なんてないしな」
 俊矢はそう言って、皆同様に円陣を組むことを承諾しました。
 そして――――――――――
「皆、絶対に2回戦も突破するぞーーーー!!!」
「「「「オーーーーー!!!」」」」」
 海堂の一声と共に皆は気合の入った声で叫びました。
 こういう事は主将がやる仕事なんですがね。

更新日:2010-07-30 22:20:57

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