• 3 / 150 ページ

第二試合 Pros and Cons~認める者と認めざる者~

「行くよー!!俊矢くん!!」
「オウ!!こい!!」
 俊矢そう叫ぶと、正がボールを投げた。
 正と俊矢は今現在進行形で、練習中です。しかし、二人は只のキャッチボールをしていません。
 俊矢はまるで捕手の様な構えをしながら座り、正は投手かのように俊矢のグローブに向かってボールを投げ込んでいます。
・・・・・そうです。なんと、二人は投手&捕手のバッテリーだったのです。
なんですとぉーーーーー!?私も吃驚です。
 正式に書くとこうなります。
伊藤正、右投右打、ポジションは投手。そして、彼の生命線でもある球種は・・・
バシィィィィ!!
 只今聞こえたように、一年生ながら『MAX140km/h』の直球(ストレート)です。しかも、これを投げているのが正とは言え、中身は春香・・・女子です。
 1年で、しかも女子で140kmは凄すぎです。私の知りえる限り見た事がありません。
 案の定、これを見ていた先輩達やチームメイトも正のストレートに絶賛していました。
 しかし、メリットがあればデメリットがあるのが普通です。当然、春香にもちゃんとデメリットが備え付けられています。それは・・・
「ゼェゼェ・・・・」
 スタミナが極限に少ない事です。春香は『先発希望』をしていますが、監督は『最高5回』と自負しており、春香も「それでも先発出来るなら・・」と承諾しています。
 つまり、春香は『最高5イニング限定』と定められているのです。
 まぁー、今現在、この野球部にはエースがいますので先発出来る日がいつになるかは不明ですけど。
「なんだー?もう疲れたのか?」
「ご、ごめん!!少し休ませて~!!」
 それを聞いた俊矢はしょうがないなーと言い、春香の疲れが取れるまで自分は打撃練習へと移動した。
とここで、今度は俊矢のデータを紹介。
 井畑俊矢、右投右打、ポジションは捕手。
 俊矢は強肩強守の捕手で、去年は1年生ながらレギュラー入りする実力を持っています。特にリード面に関してはプロ顔負けです。
 その理由としては、俊矢がプロ野球球団「ヤクルトスワローズ」に在籍している古田敦也選手に憧れを持っているからです。
 俊矢は「何れは古田さんみたいな捕手になりたい!!」と思っている事から、リードが上手く、スカウト陣では『ポスト古田』と呼ばれ、1年で既にプロのスカウトに目を付けられていました。
 でも、そんな完璧に見える俊矢にもやっぱり、デメリットがあります。それは・・・・
ビシュ!!カーン!!ブン!!
・・・・打撃面が苦手な所です。
 多少、ヒットこそは打てますが、ホームランなんてことは0%近くありえなく、打撃面で言えば『8番打者』並みです。
 そして、今回の打撃練習でも俊矢は10球中ヒットは僅か1本でした。
「ふぅー、やっぱり打撃は全然だな・・・」
 俊矢はそう言いながら、頭を掻きながら溜息を漏らすと、十分休憩しただろうと思い、再び春香の元へ行こうとすると近くから誰かの声が響き渡っていた。
「テメェー!!調子こいてんじゃねぇーよ!!」
 その声は完全に怒っているような感じで、言い方から何処かの不良の様な言い草だと分かります。しかも、その声の方角は先程まで正と俊矢が練習し、現在は正が休憩している場所でした。
 それを聞いた俊矢は特に驚く事もなく、頭を抱えながら溜息をついた。
「はぁー、またアイツが春香に絡んでるよ・・・・・」
と、呆れながら。
 そして、俊矢急いでその声が聞こえた方へ向って行った。

「オイ、テメ―調子こいでんじゃねぇーよ!!」
「いや・・・あの・・・」
「ここは男がやるスポーツだ!!テメ―みたいな女が来る所じゃねぇーだよ!!早く、出て行け!!」
「いや、でも、私・・・・」
「あ゛?」
「うう・・・・」
 一方、春香・・・正といえば、やはり俊矢が言っていた通り絡まれていました。一人の男子生徒に。
 服装はユニホームを着ている事からここのチームメイトである事が分かります。その男子生徒は金髪で、長身。先程の雰囲気から分かる通り、不良の様です。そんな彼が正に睨みを利かしながら詰め寄っています。
 その表情は怖いです。正に『不良の顔』って感じです。私も怖くって、かなりビビっています。
「チッ!!なんでテメ―みたいな奴が居るだよ!!うぜーだよ!!」
「あ・・・・あの・・・・」
「それを何だ?女じゃ試合出れないからサングラスで素顔隠して、男子として試合に出る?」
「そ・・・それは・・」
「野球を馬鹿にすんじゃねぇーよ!!」
「べ・・・別にバカなんかしてないで・・す。私、好きだから・・・野球・・」
「あ゛?だったら、観戦でも・・・」
「オイ、そこまでにしとけよ・・・・・・高根!!」
 春香を罵りまくっているこの不良を止めるかのように割って入ってきたのは・・・俊矢だ。
「と・・・俊矢君!!」

更新日:2010-03-05 21:44:05

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook