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小説

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赤い麦わら帽子

夏休み初日、宿題を丸ごと教室に忘れた間抜けな僕は夕暮れの校舎の中にいた。
薄暗くなってきた校庭で目を覚ましたコウモリたちが舞っている。
どこからか夕飯の匂いが漂ってくる。
「腹減ったなー」
そんな言葉を口にしたのは暗い校舎にいつもとは違う気味悪さを感じたからかもしれない。


「赤い麦わら帽子を被った少女の幽霊がが校内を彷徨っている」
という怪談が流行ったのは小学校の時だろうか。
姿を見た者は……。
「幽霊ね。中学生にもなって、ありえねーわ」
呟いてみるも、思い出した話が頭から離れない。
非常灯に生々しく照らされた階段を駆け上がる。
階段を抜けると廊下に僅かながら日の明るさが残っていて僕は安堵する。
「さっさと行きますか」
やや余裕を取り戻した僕は一気に突き当たりの自分の教室まで向かってドアを開ける。


教室の窓には地平線と同化している蜜柑色の夕日。

それを眺めている、赤い麦わら帽子を被った少女。


吸い込んだまま息が停まり、心臓が大きく一回どくりと鳴った。


「どうしたの? こんなところで」
ゆっくりとこちらを振り向いたのがクラスメートの岡崎だったので
僕は吸ったままの息を安堵と供に吐き出した。

「わ、忘れ物。オマエは?」

「私もそんなとこ。でも見つからないの。鞄の中も机の中も探したけれど見つからないの」

「ふーん。じゃ、また明日探しに来れば? もう暗いし」

「チッ……。でもあと少し探してみる」

岡崎はこちらに背を向けた。あれ? 今、舌打ちされた?

「……じゃ、オレ行くわ」

忘れ物を両手に抱えた僕はそそくさと教室を後にした。
女子とずっと一緒にいるのが何となく恥ずかしかったのだ。


帰宅すると同時に岡崎の訃報を聞いた。
もちろん信じられなかった。
聞いた話だと、岡崎は今朝家を出てすぐに信号無視の車に撥ねらて、ほぼ即死だったそうだ。

今朝?

翌日。通夜に出かける前に事故の起きた現場に行ってみた。
花と一緒に供えられていた麦わら帽子は赤じゃなくて、白だった。

更新日:2010-02-17 16:23:17