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小説

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救世主伝説

隣に住んでいる幼なじみのタカシが学校に来なくなって一ヶ月が経とうとしていた。
タカシのクラスメートから聞いたうわさによるとヤツは学校に来なくなる直前に
「先祖の霊が降りてきた」だとか「自分は覚醒した」などと言っていたようで
受験のプレッシャーだか失恋だか何が原因かは不明だが、そのころからタカシの頭は
少し頭がアレな感じになってしまったようだ。

タカシは学校には来なくなったが別に部屋に引きこもっているわけではなかった。
朝と夕方、家の周りをランニングしたあとに自宅の庭で一時間ほど黒い金属バットで素振りをしている。
ちなみにタカシは元野球部でもなんでもない。ヤツは誰よりも熱心な帰宅部員だった。

ある朝タカシの素振りの音で目を覚ました僕は、寝起きの頭をボリボリ掻きながらタカシの家の庭が見える南側の窓を開けた。

「おーいタカシ。毎日なにやってんだよ。うるーせーって」

「時間がないんだ。放っておいてくれ」

「時間がないってさ、オマエ学校いってないんだからヒマヒマだろうが。
それに突然素振りなんか始めて、目指せ甲子園? ひとり甲子園?」

「オレは地球最後のバッターボックスに入る。人類を救うために」

「はぁ? それ何てアニメ?」

「アニメじゃない! アニメじゃない……。ホントのことさ。
アレを打ち返さないと、真芯でとらえないとこの世は終わる。
ねぇ。今日は家から一歩も出ない方がいいよ。だってご先祖さまがさっき五次元から電波を飛ばしてそう教えてくれたから」

タカシの充血した目はくるくると宙を泳ぎ、なぜか涙でうるんでいた。

「……そうか。なんつーか、落ち着いたらさ、また学校来いよな」

幼なじみの頭がおかしくなったなんて思いたくなかったが
どうやらうわさを認めざるを得ないようだ。
僕はなんだか悲しくなってタカシに背を向け自室へ戻った。


数時間後。二十四時間以内に巨大隕石が地球に衝突することが政府によって正式発表されることを僕はまだ知らなかった。

更新日:2010-02-17 15:53:08