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小説

携帯でもPCでも書ける!

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ワスレモノ

塾の帰り道、モモコは必死に自転車を漕いでいた。
このままでは毎週楽しみにしているラジオ番組に間に合わない。
今日は番組の前半にモモコの好きなアイドルがゲスト出演するというのに。

「仕方ない。近道だ!」

モモコはいつもの帰り道を外れて川沿いの遊歩道へ入った。
このコースなら少し薄暗いけれど、いつもより五分は早く家にたどり着けるはずだ。



夜の遊歩道は予想以上の静けさで
自転車のタイヤがアスファルトを踏みしめる音以外何も聞こえなかった。

急に不安になってきたモモコの脳裏に
数年前このあたりで起きた連続少女失踪事件のことが頭に浮かぶ。
行方不明になっている少女たちはいずれもモモコと同じ年頃の中学生で
警察もマスコミも一時大々的に事件を取り上げたものの
彼女たちの安否は未だ確認できず、事件に関連した証拠物件も発見されていない。

そして唯一の手がかりである不審者らしき男が目撃されたのが、この遊歩道。

モモコは背筋に悪寒が走り、足がすくみそうになるのを必死に抑えてペダルを漕ぐことに神経を集中した。



遊歩道が人気のある明るい一般道へつながる手前まで来ると、モモコはようやく自転車の速度を緩めた。

「ピリリリリ……」

ふと足下から電子音がして目をやると二つ折りの黒い携帯電話が路上で青いイルミネーションを点滅させながら震えていた。

「落とした人が自分の携帯にかけてきたのかも」

モモコは着信音が止まった携帯を拾い上げて中の画面を開く。

待ち受け画面には四枚の少女の写真がそれぞれ四分割されて映っていた。

そのうち三枚はどこかで見たことのある少女の写真。

たぶんテレビで見たことのある連続失踪事件の少女たちの写真。



そして残りの一枚は、望遠レンズでとられたであろうモモコの写真。


「……!」

絶句して携帯から目が離せないモモコの瞳にメール着信の画面が映る。
震える手で受信ボックスを開くと無題のメッセージには一行こう書いてあった。



「ヒロッテクレテ アリガトウ」

更新日:2010-02-17 15:49:26