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注文、紅い青年、謎の少女

外に放り出された金時と新八。
「っち。だから、言っただろうが新八!放り出されるのがオチなのは気付いてたろうが!」
と新八に怒鳴り散らす金時。よほどトシーニョのことが気に入らないのだろうか。
新八は困った顔で金時の機嫌が良くなるのを願った。すると、ぐっとタイミングで携帯が鳴り響いた。ポケットに手を突っ込み携帯を取り出した。
「もしもし。」
『・・・・新八。金時もそこにいるアルネ。注文アル。』
大人びた女性の声が携帯から聞こえてきた。新八は自分の姿は見えていないと思っても反射的に背筋を伸ばしてしまった。
「ひ・・・久しぶりです。神楽さん。」
『単刀直入に言うアル。今から事務所のほうに使いを出すアル。そいつから資料をもらうアル。そのあと、その資料の奴を今日中に殺すアルネ。頼んだネ。』
と自分の用件だけ言うと中国系マフィアのボス-神楽は電話を切った。
金時は呆ける新八を見て大体の想像はできたが一応尋ねた。
「で、なんだって?あのボス。」
新八は我に返って事務所に歩みを進めながら口を開いた。
「えーと、今から事務所にくる使いの持ってる資料の人を殺せだと。」
強く握りしめたこぶしの中に汗が溜まったのがわかった。
新八と金時が殺しに手を出し始めたのはもう何年も前の話だった。
あれは2年前くらいかなー。って、今はそんな話じゃなくて。これはまた今度。

そうこうしてるうちに事務所に着いた二人は使いの者が来るのを待った。
時計はもう2時を知らせていた。でも、歌舞伎町は一生にぎやかになってきてやみそうにもない様子だった。
「そろそろ準備しとけよ。新八。」
と新八へと金時は言葉を投げかけた。新八は引出しにしまっていた拳銃を取り出して悲しい目で見つめた。金時はその様子を手鏡越しで見ていた。
「おーい。新八なーにくよくよしてんだ?俺たちはもう足を踏み入れたんだぜ。いまさら引き返せねぇーよ。人生そんなもんだよ。気づいたら引き返せなくてダラダラ引きずっちゃうんだからさー。諦めろよ。」
そんな金時の人殺しを簡単に思ったような口のきき方に新八自信許せなかった。いまにも金時を一発殴らんと欲す。それを知ってから知らなくてかわからないが金時は動こうとしない。
「金時は、殺しを何とも思わないのか?人を殺して平気でいられるか!?」
新八は一文一文言葉を告げるごとに興奮しているのか、怖いせいなのか声が上がっていく。
それを金時は黙って静かに聞いていた。
「ハァ・・・・。」
ひとしきり新八の言い分が終わると金時はソファーに投げられていた帽子をとって立ち上がった。
「いいか。俺は殺しはできる限りしたくない。けど、俺には人殺しの過去があるからな・・・。」
帽子を深くかぶった金時の表情は全くうかがえない。けど、影のせいか気のせいなのかとっても悲しんでるように見えた。
「金時・・・・。お前…。」
と言いかけた時だった。扉がもうすごい勢いで開いた。
扉の向こう側にいたのは一人の少年であった。
「・・・・・使いだ。」
黒のキッチリとしたスーツに首には真っ赤なマフラーが巻かれていた。目つきの悪い目で金時を新八の事務所を見渡すと資料を無造作に金時に投げた。
「神楽様からの付けくわえだ。20時間以内に殺せと。」
そう付け加えると青年は背を向けて扉をまた乱暴に閉めていった。
少し固まっていた二人は渡された資料へと目を通した。
資料には、名前・写真・職業その他モロモロが書いてあった。
ターゲットの顔写真を見た金時は眉を少ししかめた。そして、
「行きますか。」
と言うと金時は拳銃を懐からチロリと確認して事務所を後にした。
後に続いて新八がついて行った。

ターゲットは、先ほどの’金髪碧眼外国製ホスト’のガードマン2人であった。

更新日:2010-02-25 19:57:43

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