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第1話 動き出す歯車(修正済み)

Kプログラムの失敗によって発生した太陽エネルギーの爆発。
その威力は核爆弾を遥かに凌駕するものだった。
爆発の衝撃波は研究施設だけに留まらず、その勢いを保ったまま、世界中へと波及した。
それによってあらゆる建物が倒壊し、吹き飛ばされ、殆どの動植物の生命が奪われた。
生き残った人々は残された資源を巡って、激しい争いを国家規模で繰り広げた。
戦いで敗北した国は滅び、勝利した国は戦いでの傷を癒し切れずにやがて滅んでいった。
地球はもはや滅亡寸前の状態に陥ったと……誰もが思ったことだろう。
だが、それは間違いだった。
驚くべきことに温暖化で沈み込んだ大陸の代わりに長い時間をかけて新たな大陸が誕生し、新たな生物や植物が生まれ、自然環境を育んでいった。
希望を持った人類は幾多の努力を重ねて文明を再構築し、それを礎に新たな国々を造り上げていった。
その中で最も大きな力を持った国があった。
かつての日本に位置する国“リライアス国”。
世界でまだ続いている内戦や紛争が全く発生しておらず、化石燃料、そしてそれに代わる太陽エネルギーなどの資源に恵まれていた。
世界中の人々がリライアス国は絶対に安全だと信じて、この国に集まった。
平和が長く続いたこの国に。
しかし、それは永久であるものではなかった。

リライアス国 首都“バトラー”
バトラーにはリライアス国を治める城とその下に広がる大きな城下町があった。
町全体を強固な壁で覆い、様々な危険から民衆を守っていた。
そして、バトラーの城の内部にある会議室。
中は横幅20m。奥行きが40mほどはある大きな部屋だった。
その部屋を縦に半分に割るように長いテーブルが置かれている。
テーブルの側面に隙間なく高価な木材で作られた椅子が並べられ、左右に100人あまりの人々が座っていた。
その殆どが細かな装飾が施された貴族服を身にまとい、大臣や将軍など高い地位を持った城の人ばかりだった。
「全く、一体何があったというのだ?」
「城の重役全てが呼ばれるとは余程のことがあったんでしょう」
「まぁ、詳しい事は国王陛下から説明があるだろう」
席に座った人々ががやがやと騒いでいると、部屋の扉がゆっくりと開かれた。
その瞬間に部屋の中にいた人々が一斉に口を閉じる。
扉の外から2人の人物が入ってきた。
一人は頭に冠を被り、高価な装飾が施された服を着た高齢の男性だった。
髪は白く、短い。そして、透き通るような青い目をしており、肩に届きそうな長い耳をしていた。
その特徴からロール族であり、この国の王であることがわかる。
ロール族はリライアス国の北部に住む部族の1つで、青い目と長い耳が特徴的だ。しかし、それ以外は人間と何ら変わりはない。
もう1人は小太りの初老の男性だった。髪は禿げて、立派な黒いひげをしている。部屋で待っていた人と同じように貴族服に身を包んでいた。男は国王の側に付き従って部屋に入ってきた。
国王はテーブルの上座に設けられた王座にゆっくりと腰を下ろした。
彼の名はダッド・ロール。
第23代目リライアス国王に位置する男だった。
ダッドは一同を見回すと、そばに控えていた小太りの男に視線を移した。
「ラード、皆に報告を頼む」
「かしこまりました、陛下」
ラードは深くお辞儀すると、席に座った人々全員の耳に届くように甲高い声で言った。
「例の組織“K”の手によってレーラ国が陥落しました!!」
「なんだと!?」
「あ、ありえない……そんなことが!?」
「信じられん……」
ラードの報告によって一同の間に衝撃が走り、室内は騒然となった。

更新日:2011-08-24 08:26:21

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