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私は…

「何で?おかわりしたらあかんの?」
と聞くと、和気さんは…

「だって…おかわりしたら計算が合わへんなるもん。」
と言った。私は…

「はぁ?計算が合わへんってどういう事よ?
じゃぁ、最初から3人分のお米しか買ってないって事?」
と聞くと、和気さんは黙って下を向いた。
私は…

「朝はどうしてんの?朝もご飯だけなん?」
と聞くと、和気さんは…

「たぶん…ご飯だけやと思う。」
と言った。私は…

「えっ?朝起きて見送ったれへんの?」
と聞くと、和気さんは笑いながら…

「お父さんが仕事から帰ったら起こしてくれるから…。
ヒロが何時に出て行ってるか知らんねん。」
と言った。私は…

「普通は朝起きてご飯食べさせて“行ってらっしゃい”って
見送ってあげるものやねんで。じゃぁ、休みの日はどうしとん?」
と聞くと、和気さんは…

「昼すぎまで寝とう…。」
と言って笑っていた。私は…

「自分、ホンマに何もせんねんな。何の楽しみがあってヒロは生きとん?」
と聞くと、和気さんは…

「楽しみって…?」
と言った。私は…

「ホンマに分からへんの?だって考えみ?
学校が休みの日でも公園に行って一緒に遊んであげるわけでもなく、
動物園とか遊園地に連れてってあげるわけでもなく、誕生日やクリスマスも
ヒロだけケーキもプレゼントもなく、服もまともに買ってもらわれへん。
学校から帰ったら物音ひとつ立てたら怒られるし、視力が落ちて眼鏡が欲しいと
言えば目が悪いフリしてると怒鳴られるし、TVを見させてもらえるわけでもなく、
父親に怒られても母親が庇ってあげるわけもなく、ましてや夫婦で一緒になって
どついたり蹴ったりするし、おかずもたまにしか貰えず、ましてやおかわりしたら
怒られるし…そんな生活のどこに楽しみがあるって言うん?なぁ?言うてみ?
あんたは何の為にヒロを産んだん?本妻から男を獲る為だけに産んだにしても
もっと人間扱いしてあげたら?ヒロは奴隷や家畜やないねんで。」
と言うと、和気さんは…

「だからヒロに“ここにおっても幸せになれんから施設に行け”って言うねん。」
と言った。私は腹が立ち…

「あんたら、どんな神経しとん?子供に散々な事しとって挙句の果てに
子供に“施設に行け”ってどういう事よ?どこまで苦しめたら気が済むん?
そんなにいらん子なんやったら愛情あるフリなんかせんと黙って自分の手で
施設に連れていき。 今まであんたらがヒロにしてきたこと聞いてたら
施設に行った方がまだ幸せやわ。」
と言った。和気さんは…

「私もそう思う。実はな…お父さんも“いらんから連れて行け”って
言うから施設に連れて行こうとした事はあるねん。
でも、ヒロが感づいて断固として動かんかってん。
それからも何回も“施設に行け”って言ってんけど…行かへんねん。」
と言った。私は…

「ホンマあんたら最低やな。旦那の顔が見てみたいわ。
あんたは自分さえよかったらいいねんな。子供はどうでもいいねんな。」
と言った。和気さんは…

「いや…そういうわけじゃないねんけど…。」
と言って下を向いて黙った。私は…

「あんた、もし近所が“虐待や”って通報したらどないすんの?」
と言った。和気さんは…

「大丈夫やわ。周りの人はそんなに見てへんみたいやし。
もし、通報されたとしてもお父さんがおるから大丈夫やねん。」
と言って笑った。

更新日:2010-02-09 16:33:42

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身近であった実際の事件~児童虐待~