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第三章 木々に埋もれる道具屋

■ ■ ■ ■ ■

 翌日。社は早苗に案内され、香霖堂へと辿り着いた。
 鬱蒼とした木々に囲まれた店。入口は開け放しで、目隠しに暖簾がかけてある。店そのものの大きさはなかなかのものだ。
「お邪魔しまーす」
 声をかけつつ、社が暖簾を潜って中へ。早苗もそれに続く。店内では、既にカウンターに霖之助が腰かけていた。
「よく来たね、御剣くん。早苗くんは道案内かい?」
 社たちの姿を認め、声をかける霖之助。社はそれに苦笑いを浮かべ、その隣では早苗が
「買い物にも来ましたよ」
 と答える。対する霖之助は手招きをしつつ口を開いた。
「まあ、まずはこっちにかけてくれ。ああ、椅子はそっちに並べてあるから」
 そう言いつつ、棚の前に並べられた丸椅子を指し示す。社と早苗はそれに従ってカウンター前に座った。それを確認し、霖之助が話し始める。
「とりあえず、主に君に頼むのは三つ。品物の回収とそれの鑑定、あとは僕が席を外している間の接客だ。なに、適当に世間話でもしていてくれればいい」
「ふむ」
 社が頷いて先を促した。
「基本的に、価格交渉は僕がやる。もし僕がいない間に誰か来た場合は、事情を話して待ってもらってくれ。基本的にここは常連しか来ないから、言えば聞いてくれる」
「分かりました」
「仕事の説明は簡単に言えば以上だ。あとは実際にやりながら覚えてくれればいい。現段階で、何か質問はあるかい?」
 尋ねる霖之助。
「品物の回収、っていうのは、何処へ?」
 社が聞くと、霖之助は失念していたとばかりに眉を顰め、答えた。
「ああ、すまない。それは無縁塚だよ」
「無縁塚?」
「知らないかい?」
 霖之助の言葉に頷く社。それに、霖之助は意外そうな目を向けた。顎に手をやって、感慨深そうに呟く。
「そうか……君でも知らないことはあるようだね」
「ええ。正直、自分でも意外ですけど」
 社も腕を組みながらそう答えた。霖之助はそれに笑みながら、説明をし始めた。

更新日:2010-02-15 23:00:02

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