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小説

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 今夜寝る場所のあてがあった訳ではありません。さあどうしたものかと、
ラビフィーは途方に暮れオレンジ色からうっすら赤くなりだした空を見上げ
ました。すると彼の胸元の鍵が揺れ、パパが言った言葉を突然思い出したの
です。
「前に進むばかりが道ではないよ、時には振り返り引き返すことも必要さ」
小さなラビフィーがパパと山へ植物採取に行った時、一時道に迷ったのですが
その判断で事なきを得たことがありました。事情は違っていましたが、それで
彼はピピを送ってきた途中にあった大きなあの木を思い出したのです。一度
歩いた道でしたから、幸いにも辺りが闇に包まれる前に大きな木に辿りつく
ことができました。
ラビフィーは昼間休んだ同じ根元に今度はゆっくりと腰を下ろすと、大きく
深呼吸をしました。空には無数の星が煌き、知っている顔が次々と現れては
消えていきます。それはどの顔も懐かしく、今のこうさぎの支えとなって
いました。
小さなうさぎが生きてきたまだ数ヶ月の記憶にある存在すべてに、この言葉を
伝えたいと願いました。
  「みんな ありがと」

 夜空をまぶたの奥で抱きしめるように ぎゅっと目をつぶったこうさぎは、
今夜も大地に抱かれるように眠りにおちていったのです。ついこの間までは
幼かったその寝顔に少したくましさを感じられるように見えたのは、お月さま
のあかりのせいだったのでしょうか。


更新日:2010-10-26 21:20:02