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部活
入学から1ヶ月は経たない時期だったと思う。
「おはよう……」
自ら声をかける快挙を成し遂げるのが日々当たり前になっていた。
僕はそこそこクラスに馴染んできていたのだ。
「おはよっ」
後ろの席の葉崎は、明るくておもしろい奴だった。
趣味は料理。
だけど、葉崎は性格にかなり二面性のある人間だ。
「葉崎ぃー、宿題やった?」
寝癖のついた髪を気にする様子もない、だいぶ顔も恐いと思えなくなった古雅が、僕の席の前を通り過ぎて、葉崎の席へ向かおうとした。
「やってねぇの?」
「あぁ、昨日いそ……」
がしくてさ。
と、続くのだろうと思っていたのに、そこにはバターンという派手な音が響いた。
「あれ?」
葉崎が首を傾げる。
「なぁ、」と背中をつつかれて、僕は葉崎を振り向く。「いま、そのへんに古雅がいたように思ったんだけど……気のせいか」
「一応、……いる、けど」
僕は、僕の席の前でスッ転んだ古雅を指差す。
「痛っ……」
「がはははははははははははははははははっ!!」
「笑うなよ! 痛ぇんだよこっちは」
葉崎が目から涙を流す勢いで爆笑してた。
僕も、つられて頬を緩める。
「ははは、だって、急に、急にお前、消えははははは……」
そんなにはおもしろいことだとは思えないのだが、葉崎は壊れたように笑う。
転んで痛がっている奴に対して酷くないかと、疑問を抱きつつ、
こういうものなのか、と僕は何も言わないでおいた。
「古雅だっせぇ! なぁ、風野」
「あぁ、まぁ……ちょっとな」
楽しそうにしているのを害してはならない。
僕は、葉崎に合わせて頷き、一緒に笑った。
一緒に笑う。
僕にとってはなかなかないことだった。
古雅、ごめん。
心の中で呪文のように唱えながら、今だけは笑っていたいと必死だった。
また、この「友達」が、いつの間にか友達でなくなってしまわないように、必死だった。
「おはよう……」
自ら声をかける快挙を成し遂げるのが日々当たり前になっていた。
僕はそこそこクラスに馴染んできていたのだ。
「おはよっ」
後ろの席の葉崎は、明るくておもしろい奴だった。
趣味は料理。
だけど、葉崎は性格にかなり二面性のある人間だ。
「葉崎ぃー、宿題やった?」
寝癖のついた髪を気にする様子もない、だいぶ顔も恐いと思えなくなった古雅が、僕の席の前を通り過ぎて、葉崎の席へ向かおうとした。
「やってねぇの?」
「あぁ、昨日いそ……」
がしくてさ。
と、続くのだろうと思っていたのに、そこにはバターンという派手な音が響いた。
「あれ?」
葉崎が首を傾げる。
「なぁ、」と背中をつつかれて、僕は葉崎を振り向く。「いま、そのへんに古雅がいたように思ったんだけど……気のせいか」
「一応、……いる、けど」
僕は、僕の席の前でスッ転んだ古雅を指差す。
「痛っ……」
「がはははははははははははははははははっ!!」
「笑うなよ! 痛ぇんだよこっちは」
葉崎が目から涙を流す勢いで爆笑してた。
僕も、つられて頬を緩める。
「ははは、だって、急に、急にお前、消えははははは……」
そんなにはおもしろいことだとは思えないのだが、葉崎は壊れたように笑う。
転んで痛がっている奴に対して酷くないかと、疑問を抱きつつ、
こういうものなのか、と僕は何も言わないでおいた。
「古雅だっせぇ! なぁ、風野」
「あぁ、まぁ……ちょっとな」
楽しそうにしているのを害してはならない。
僕は、葉崎に合わせて頷き、一緒に笑った。
一緒に笑う。
僕にとってはなかなかないことだった。
古雅、ごめん。
心の中で呪文のように唱えながら、今だけは笑っていたいと必死だった。
また、この「友達」が、いつの間にか友達でなくなってしまわないように、必死だった。
更新日:2012-02-02 23:29:30