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第七章 「拘置所」

朝早く移送車に乗せられた

いつも通り、手錠に腰ひもを付けられた

移送に同行した看守は、いつか、俺に長い人生のほんの数か月、数年だと話してくれた看守だった

言葉を語るでもなく、無表情な俺を横目で見ていたようだった

拘置所が近づくと、白くて大きな壁が見え、その奥には長い塔が立っていた


ここは刑務所と拘置所が一緒になっているところだった

拘置所と言えば、裁判待ちのような場所とイメージしていたが、

その気持ちは一気に吹き飛ばされた・・・


『あの長い塔・・刑務所だという感じですね・・・』


俺は看守に言った


『ここは一緒だからな・・・だが、中でちゃんと区分けされていて、一緒に何かをするということはないと思うぞ』


『そうなんですか?』


『詳しくは分からないけどな・・・』


『・・・』


車は大きな門の前に行くと無線で着いたことを知らせた


扉は自動で開き、車はゆっくりと中に入った・・


車が停まると拘置所の刑務官が俺を迎えに来た


俺は留置所の看守と共に、待合室に向かった


季節は真冬とてもとても寒かった・・・


待合室には、受刑者の心得的なことや、面会時のルールなどが貼りだされていた


より、自分が今置かれている立場を認識した



拘置所の担当者が来るまで数十分あった



『看守さん、短い間でしたがお世話になりました、私は罪を反省しどんな判決を下されても受け入れ、努めます』


『うん・・そうしてくれ・・ここは留置所と違ってルールが厳しいから大変かと思うがしっかりな』


『ありがとうございます』



「ガチャ・・」


担当者が来ると、看守は2,3言葉を交わし、敬礼して部屋を出て行った


俺はその場で軽くルールを説明され別室へ連れて行かれた


まずは荷物の検査から始まった


留置所から持ってきた、衣類、日用品、本、手紙、写真など全部チェックされた

その後、これに着替えろと言われ、専用の服に着替えるよう命じられた

どこで着替えるのかと思うと、その場で着替えろとのことだった


「これが留置服なのか・・・」


荷物の検査と着替えが終わると、また別の部屋へと呼ばれた


その部屋では、自分の名前、住所、家族構成の他、沢山のことを聞かれた

手紙をやり取りする人も申請しないと出来ないとの事だった


俺は少し迷ったが、もし、綾瀬さんがここに手紙を送ってきたとしたら申請してないと受け取ることが出来ない・・・

そう思い、申請をした


こちらから出すことはなくても、受け取ることはしたい・・・


自分が何だか卑怯にも感じたが、まだどこかで希望を持ちたかったのだろうと思う・・



『おい、小川』


『はい』


『ここでのお前の番号は「1127番」だ』


『はい』


『番号ではなく、名前で呼ぶ時ことの方が多いが、自分の番号はちゃんと覚えておけ』


『はい』


『お前、留置所で自殺未遂をしたそうじゃないか?何でだ?』


『それは・・自分でも気づきませんでした、気が付いた時には看守さんが大声を出していました』



「バンッ!」


目の前の看守はテーブルに大きなメモ帳を叩き付けた



『ここでは、そんなことをされたら迷惑だからな!いいか、お前は犯罪を犯してここにいるんだ、生温い甘えや考えは通用しないと思え』


『あれは、そういうのではありません、いつの間にあんな事をしていたのは事実ですが、故意ではありません』


『誰が口答えしていいといった!』


『すみません・・』



『・・・』



看守は俺のじっと見た



『通常、最初は独居にいれるんだが、お前は最初から雑居に入れる』


『はい』


その違いがまるっきり分からなかった・・


俺は留置所では、ほぼ一人で独居の生活をしていた

一人よりはマシだ・・そう感じた


「バサッ」


目の前に数枚のファイルが置かれた



『これを全部読んでおけ、あと、同部屋の人間たちと揉め事は起こさないように』


『はい』



ファイルを手に取り読み始めた


中での生活のルールが書かれていた


「未決者のルール」

「受刑者のルール」


「どちらを読めばいいんだ・・・」


取りあえず、何かを聞けばまた大声を出すのだろうと思い両方読んだ


『読んだか?』


『はい』


『よし、次は健康診断だ』


『はい』


医務室に行き健康診断を受け、その後、雑居と呼ばれる部屋へと連れて行かれた・・・







































更新日:2010-10-19 14:58:59

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