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第1章
巨大なクリスタルのような形をした音響ポッドが岩肌に突き刺さっていた。それは人が乗れるほどに大きく、そして操縦者は半透明で防音加工された円錐状の空間に押し込められていた。
そのポッドの先頭にはギルドマスターが音響機のシャフトを注意深く握ったまま、その盲目の目で正面の石を睨み聞き耳を立てている。
また、彼の傍らにいる若い二人の助手も椅子から立ち上がり、目を閉じわずかな振動も聞き逃すまいと全神経を聴覚に集中させていた。
不意に
「Na’Grenis!」
と年老いたマスター*1がドニ語で吼えた。
― もろいな!
そう言いながら彼はひざの上のマップテーブルに積み上げられた地図の一番上を左指でなぞる。
この方向に振動波を送るのはこれでもう10回目になる。毎回少しずつ波を強くし、ポッドを石に深く突き刺しながら、微妙に岩の共鳴を変化させてきたのだが・・・。
「Kenen voohee shuhteejoo」
― 岩塩層なのかもしれません。
助手の一人がためらいがちにつぶやいた。
「もしくは石灰(白亜)か・・・」
もう一人の助手がそう自信なさそうに付け加える。
「いや、こんな深さに、それはないだろう」
厳然と老人は言い切りながら、山積みになった透明なシートを次々とめくり、あるページを開く。そしてそのページを開いたまま、真っ赤なマーカーをラックから取り出し印をつけた。
「ああ・・・」
助手が同時に声を漏らす。その真っ赤な印こそマスターの意図そのものを示していた。
「よし、方向を変えてみよう。もしかしたら部分的にもろい場所なのかも知れん」
そう言いながらマーカーをラックに戻すと、マスターは美しい模様が施された音響ポッドのシャフトを握り、長い経験に培われた勘でその先を少しだけ右に移動させた。
「同じ強さでやってくれ、1パルス目は55ビートで。同じく2パルス目を」
すぐさま助手がその通りに機器を調節する。一呼吸おいて、シャフトからポッドの先端へ振動が波打った。
すると、
カーン・・・!
まるで見えない楔(くさび)が石を貫いたような、くっきりとした音が部屋に鳴り響いたのだった。
そのポッドの先頭にはギルドマスターが音響機のシャフトを注意深く握ったまま、その盲目の目で正面の石を睨み聞き耳を立てている。
また、彼の傍らにいる若い二人の助手も椅子から立ち上がり、目を閉じわずかな振動も聞き逃すまいと全神経を聴覚に集中させていた。
不意に
「Na’Grenis!」
と年老いたマスター*1がドニ語で吼えた。
― もろいな!
そう言いながら彼はひざの上のマップテーブルに積み上げられた地図の一番上を左指でなぞる。
この方向に振動波を送るのはこれでもう10回目になる。毎回少しずつ波を強くし、ポッドを石に深く突き刺しながら、微妙に岩の共鳴を変化させてきたのだが・・・。
「Kenen voohee shuhteejoo」
― 岩塩層なのかもしれません。
助手の一人がためらいがちにつぶやいた。
「もしくは石灰(白亜)か・・・」
もう一人の助手がそう自信なさそうに付け加える。
「いや、こんな深さに、それはないだろう」
厳然と老人は言い切りながら、山積みになった透明なシートを次々とめくり、あるページを開く。そしてそのページを開いたまま、真っ赤なマーカーをラックから取り出し印をつけた。
「ああ・・・」
助手が同時に声を漏らす。その真っ赤な印こそマスターの意図そのものを示していた。
「よし、方向を変えてみよう。もしかしたら部分的にもろい場所なのかも知れん」
そう言いながらマーカーをラックに戻すと、マスターは美しい模様が施された音響ポッドのシャフトを握り、長い経験に培われた勘でその先を少しだけ右に移動させた。
「同じ強さでやってくれ、1パルス目は55ビートで。同じく2パルス目を」
すぐさま助手がその通りに機器を調節する。一呼吸おいて、シャフトからポッドの先端へ振動が波打った。
すると、
カーン・・・!
まるで見えない楔(くさび)が石を貫いたような、くっきりとした音が部屋に鳴り響いたのだった。
更新日:2010-01-13 15:01:05