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エピローグ



----2009年 4月下旬


兄ちゃんの車で大学から帰って来た僕。
明日から楽しい楽しいGWです。

『あっ!?』
庭先を見て声をあげた僕。
『ん?』
と兄ちゃん。
『鯉のぼり…父さん出しちゃったんだ…』
僕は落胆していました。
『そんな嫌な顔をするな。あの鯉のぼりにはな…』
眉間に皺を寄せて険しい顔をする兄ちゃん。
『違うよ。そういう意味じゃないよ。
出すんだったら僕も一緒に出したかったんだよ』
『…話…聞いたのか?』
『うん』

車から降りて、我家の鯉のぼりを見上げました。

黒い鯉が父さん。
赤い鯉が母さん。
青い鯉が兄ちゃん。
緑の鯉が僕。

その日は風の強い日でした。
けれどもっともっと風が強くならないかと願っていた僕。

兄ちゃんも僕の隣に立って、鯉のぼりを見上げていました。
『今日は風が強いから、鯉のぼりも元気に泳いでるな…』と兄ちゃん。
『違うよ。うちの鯉のぼりは「泳いでいる」んじゃなくて「走ってる」んだよ』
僕の言葉を聞いて、兄ちゃんはキョトンとしていましたが、
すぐに僕の言ってる意味が分かったようです。
『…そうだな…元気に走ってるな』
そう言った兄ちゃんの口元には、笑みがこぼれていました。

そう。
我家の鯉のぼりは泳いでいるのではない。
毎年この時期になると、家族そろってツーリングをしているのです。

来年も…再来年も…ずっと…ずっと…。


元気に走れ!我家の鯉のぼり!

更新日:2009-12-27 00:27:34

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