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第九章-狂乱

ぼわッ!!

「な、何だッ!?これはッ!?」

空の耳に、何だか驚いた声が聞こえた。
空は先程まで黒い男達に殴られていたのだが、いきなり止んだのだ。
「・・・・、・・・・っ?」
空はそれが不思議に思い、目を開け、周りを見渡す。
そしてそこには・・・・。

ぼわあぁ!!

『黄金の炎』が燃え盛っていた。
「ッ!?」
空は思わず目を見開く。
『黄金の炎』は、まるで空を守るように、黒い男達を火達磨に変えていっている。
しかし空の義理父は燃えずに、掌を天に仰ぐと、
「あぁはははははッ!!これがッ!これが『アダムの末裔』かッ!!面白いッ!面白いぞッ!!」
と大口開けて、笑い出した。
空は殴られた痛みで目の前がぼやけており、気を抜けば倒れてしまいそうだ。
おかしい。
狂っている。
そして・・・・怖い。
空の周りには『黄金の炎』が燃え盛って、その中で叫び散らしながら、死に絶えてゆく者が居るのに、義理父は腹を押さえ笑っている。
恐怖という恐怖が、空の心の中に広がってゆく。
今まで義理父を憎んだことはあったが、ここまで恐怖を感じた事が無い。
そんな感情が心の中で充満し、思わず空は、義理父から離れる様に後退りをする。
それに気が付いた義理父が、口の端をニィと攣り上げ、無言で近づいてきた。
「・・・・、・・・・。」
空もそれに合わせ、後退りをするが、『黄金の炎』が邪魔になり、上手く行かない。
そして義理父は空の目の前で止まり、より一層口の端を歪ませると、白衣の中に手を突っ込む。
空は訝しげに義理父を見たが、次の瞬間、頭に冷たい物が当たった。

かちゃ。

それは護身用くらいの銃だった。




更新日:2010-02-14 19:49:21

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