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卵 窓辺 憎悪 (恋愛)
久しぶりにあの男を見た瞬間、自分の中で何かが壊れた。
心の中でゆっくりと頭を擡(もた)げようとする、醜い復讐心。
過去に自分が堕ちた地獄へ誘(いざな)ってやりたいという、汚い欲求。
徐々に心の中で増幅していく、男への憎悪。
…そんな事をすれば、漸く手に入れた幸せな日々を失う事になるというのに。
あの頃の私は、彼の事を愛していた。
…彼が自身の、すべてであるかの様に。
…まるで母親の存在を絶対と信じる、卵から孵ったばかりの雛鳥の様に。
今にも自分の中で、何かが暴れ出しそうになる。
再び壊れそうな、自分。
全く変わらない、あの男。
『俺、他に彼女いないなんて、言ったっけ?
もう、別れよっか?…お前真面目すぎて、つまんないよ。』
あの日の彼の言葉が、頭の中で木霊する。
彼は私があの時の女だという事に、気付きもしない。
…あんなにも残酷な言葉で私を、永遠とも思えるような長い地獄へ突き落したというのに。
どうすれば、彼を膝まづかせる事が出来る?
そんなの、簡単でしょう?
…今の、私なら。
…全てを失う覚悟さえあれば、ね?
心の中で、悪魔が囁いた。
ふと窓辺を見ると、真っ白な雪が降っていた。
そうだ。私にはもう、大切な人がいるじゃない。
…私に人間らしい感情を再び取り戻させてくれた、とても大切な人が。
降りしきる雪の中、私を好きだと言ってくれた、彼の穏やかな声。
自分は絶対に裏切らないと言ってくれた、彼の優しい瞳。
…あんな馬鹿な男の為に、再びあの人を傷つけるなんて真似、出来ない。
…彼を失うだなんて、それこそ耐えられるはずがない。
気付くと私は、クスクスと笑っていた。
私の心からは、さっきまでの醜い感情は既に姿を消している。
携帯を取り出し、私は愛する彼に電話を掛けた。
「…急に、ごめんね?
今日の夜、会いたいんだけど。
…駄目かな?」
※5/21 以前書いてたものを、再掲載しました。
久しぶりにあの男を見た瞬間、自分の中で何かが壊れた。
心の中でゆっくりと頭を擡(もた)げようとする、醜い復讐心。
過去に自分が堕ちた地獄へ誘(いざな)ってやりたいという、汚い欲求。
徐々に心の中で増幅していく、男への憎悪。
…そんな事をすれば、漸く手に入れた幸せな日々を失う事になるというのに。
あの頃の私は、彼の事を愛していた。
…彼が自身の、すべてであるかの様に。
…まるで母親の存在を絶対と信じる、卵から孵ったばかりの雛鳥の様に。
今にも自分の中で、何かが暴れ出しそうになる。
再び壊れそうな、自分。
全く変わらない、あの男。
『俺、他に彼女いないなんて、言ったっけ?
もう、別れよっか?…お前真面目すぎて、つまんないよ。』
あの日の彼の言葉が、頭の中で木霊する。
彼は私があの時の女だという事に、気付きもしない。
…あんなにも残酷な言葉で私を、永遠とも思えるような長い地獄へ突き落したというのに。
どうすれば、彼を膝まづかせる事が出来る?
そんなの、簡単でしょう?
…今の、私なら。
…全てを失う覚悟さえあれば、ね?
心の中で、悪魔が囁いた。
ふと窓辺を見ると、真っ白な雪が降っていた。
そうだ。私にはもう、大切な人がいるじゃない。
…私に人間らしい感情を再び取り戻させてくれた、とても大切な人が。
降りしきる雪の中、私を好きだと言ってくれた、彼の穏やかな声。
自分は絶対に裏切らないと言ってくれた、彼の優しい瞳。
…あんな馬鹿な男の為に、再びあの人を傷つけるなんて真似、出来ない。
…彼を失うだなんて、それこそ耐えられるはずがない。
気付くと私は、クスクスと笑っていた。
私の心からは、さっきまでの醜い感情は既に姿を消している。
携帯を取り出し、私は愛する彼に電話を掛けた。
「…急に、ごめんね?
今日の夜、会いたいんだけど。
…駄目かな?」
※5/21 以前書いてたものを、再掲載しました。
更新日:2010-05-21 13:12:01