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第八章~其の後~ 投げられた采
翌朝。幻想郷一有名な神社の巫女は、境内の掃除をサボっていた。
朝食を終え、箒を持って社務所を出て、おもむろに縁側に座り込むと、そこに用意しておいた湯呑みを手に取り中身を啜る。
「ふぅ……」
湯呑みから口を離すと、彼女――博麗霊夢(はくれい れいむ)は息をついた。紅白の巫女服を身に纏っており、肩まで伸びた黒髪には大きなリボンが結ばれている。早苗のものにも似た、独立した袖を腕にぶら下げていた。
霊夢が物憂げな視線を境内に向けていると、横合いから声をかけられる。
「よー霊夢。またサボってるの?」
「あら萃香、朝っぱらから出て来るなんて珍しいわね。普段なら夜通し飲んで寝こけてるのに」
目線を声のした方へ移す霊夢。そこには彼女が言った通り、伊吹萃香(いぶき すいか)が立っていた。
背丈は、人間で言えば十代前半。やや色素の薄い長い髪には、霊夢と同じような赤い大きなリボンが巻かれている。さらに、その髪を割って覗く二本の長い角。全身から鎖をぶら下げ、腰には瓢箪もついている。幻想郷でも数少ない、鬼の少女だ。いや、年齢的には少女とは言えないが。
霊夢の言葉に、萃香は不思議そうな顔で首を傾げ、
「それがさぁ、珍しく昨日は紫の付き合いが悪かったんだよねぇ~。何か、今日は何か起こるみたいなことを言ってさ」
と答えた。霊夢はそれに軽く顔を顰めつつ呟く。
「あの紫が何か起こるって……面倒なことにならないといいんだけど」
「面倒が嫌いなのは分かるけど、境内の掃除サボりっぱなしもまずいんじゃないの?」
霊夢の隣に座り込みながら、萃香が霊夢に問いかける。対する霊夢は眉ひとつ動かさずにお茶を啜り、
「いいのよ。この時期の掃除なんていくらやっても終わらないんだから。それに……」
と答えて、再び境内の一角に目を移した。ちょうどその時だ。
ゴッ!
「うおっと!?」
突風に驚き、萃香が声を上げる。その隣で、霊夢は風に煽られて境内中に散っていく落ち葉を見つめ、ぽつりと言った。
朝食を終え、箒を持って社務所を出て、おもむろに縁側に座り込むと、そこに用意しておいた湯呑みを手に取り中身を啜る。
「ふぅ……」
湯呑みから口を離すと、彼女――博麗霊夢(はくれい れいむ)は息をついた。紅白の巫女服を身に纏っており、肩まで伸びた黒髪には大きなリボンが結ばれている。早苗のものにも似た、独立した袖を腕にぶら下げていた。
霊夢が物憂げな視線を境内に向けていると、横合いから声をかけられる。
「よー霊夢。またサボってるの?」
「あら萃香、朝っぱらから出て来るなんて珍しいわね。普段なら夜通し飲んで寝こけてるのに」
目線を声のした方へ移す霊夢。そこには彼女が言った通り、伊吹萃香(いぶき すいか)が立っていた。
背丈は、人間で言えば十代前半。やや色素の薄い長い髪には、霊夢と同じような赤い大きなリボンが巻かれている。さらに、その髪を割って覗く二本の長い角。全身から鎖をぶら下げ、腰には瓢箪もついている。幻想郷でも数少ない、鬼の少女だ。いや、年齢的には少女とは言えないが。
霊夢の言葉に、萃香は不思議そうな顔で首を傾げ、
「それがさぁ、珍しく昨日は紫の付き合いが悪かったんだよねぇ~。何か、今日は何か起こるみたいなことを言ってさ」
と答えた。霊夢はそれに軽く顔を顰めつつ呟く。
「あの紫が何か起こるって……面倒なことにならないといいんだけど」
「面倒が嫌いなのは分かるけど、境内の掃除サボりっぱなしもまずいんじゃないの?」
霊夢の隣に座り込みながら、萃香が霊夢に問いかける。対する霊夢は眉ひとつ動かさずにお茶を啜り、
「いいのよ。この時期の掃除なんていくらやっても終わらないんだから。それに……」
と答えて、再び境内の一角に目を移した。ちょうどその時だ。
ゴッ!
「うおっと!?」
突風に驚き、萃香が声を上げる。その隣で、霊夢は風に煽られて境内中に散っていく落ち葉を見つめ、ぽつりと言った。
更新日:2009-12-23 18:53:53