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パンドラの箱ふたつ

 人類の文明が一定のレベルに到達したと判断した、神界と魔界が偶然にも同時に使節を送り込んできた。

 これまでは、まだ幼い文明であった為、直接的な接触を避け、それぞれが代理人を選んで間接的にアプローチをしてきたのだそうだ。

 「それで本日はまた、どのようなご用件で、私ども人類を訪問して頂けたのでしょうか」

 各国の大統領達を引き連れた国連の事務総長は、言葉を選びながら、神界と魔界の使節に拝謁した。

 神界と魔界の使節は、片や黒のスーツを着こなした、穏やかな表情の紳士、もう片一方は露出の多い白の薄衣を身にまとった少女だった。

 やっかいな事に双方が神界の使いを名乗り、相手方を魔界の使いであると述べた。
 人類の代表はとまどい、それとなく探りを入れようとしたが無駄だった。

 「私達は人類を案じています。そこでより良い方向に導きたいと考えています」
 少女が微笑みながら宣言すると、紳士も黙ってはいなかった。
 「欺かれてはなりません。我らこそ人類の行く末を案じておる者です」

 どうやら、どちらかを選べという事のようだが、そう言われても、人類としてはどちらを信じて良いものやら、かいもく見当もつかなかった。
 世界中から、神学者が集められたが、これがかえって混乱に拍車をかけた。

 あるものは、穏やかに語る紳士こそ神界の使いと考え、またあるものは無垢な少女こそ天使と考えた。
 「薄衣の少女はあのような格好で我らを誘惑しようとしている。これこそ悪魔の使いである証拠ではないか」
 「いやいや、天使が薄衣で現れるは古より知られたること、その意味では、男の黒い装いこそ、彼が魔界の住人であることの証。ここは少女を信用すべきであろう」
 
 神学者達の意見も真っ二つだった。

更新日:2009-11-07 17:58:30

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