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7.ぬくもり

 二人が初めてのデートをした翌週の日曜日。理子は
増山の家にいた。家族に紹介したいと言われ、招待されたのだ。
 あの日の翌日。学校では、増山はいつもと変わらぬ態度
だった。勿論理子もポーカーフェイスである。誰にも気付かれ
てはならない。互いにそうしようと言い合ったわけでは無いのに、
自然とそういう態度になった。互いの立場を考えれば、誰に
言われなくても当たり前だろう。しかも、女生徒に人気の
増山である。少しでも親しげな態度を示したら大変だ。
 だが、そうは言っても、まるで変わらぬ態度を見ていると、
日曜日の事は夢だったんじゃないか、と言う気がして来る。
 告白され、抱きしめられ、キスをした。
 増山を見る度に、その時の事を思い出してドキドキするのだった。
 そして、水曜日の夜、日曜日に家へ来ないかとの誘いの
メールが来たのである。
 理子の心臓は、激しく鼓動した。
 先生の家族に紹介される。
 こんなに早くに?
 一体、どんなご両親なんだろう。
 息子の彼女が高校生と知って驚いているのではないか。
 家族に紹介されると言うのは、とても嬉しい。未成年の、しかも
教え子だ。どうしたって周囲には秘密にしなければならない。
家族だって、良くは思わないだろう。それなのに紹介してくれる。
それだけ、増山が理子を大切に想ってくれてるからなんだ、
と思うと感激する。

更新日:2010-07-19 15:08:11

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