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危険因子

学園に着いた俺たちは、まず1年生の時のクラスに集まった。
そして、1年時は皆それぞれ違うクラスだったので、校舎内で散り散りになっていった。
だから、今俺は1年の時のクラスの、自分の机だった場所で、担任が来るのを待っている。

キーンコーンカーンコーン

聞きなれたチャイムと同時に、ガラッと扉が開き、担任がクラスにやってきた。
「よーし、お前らー。全員体育館に集合!」
やる気に満ち溢れた簡素な言葉により、俺たちは慌しく体育館に向かうのだった。

「さて、諸君たちは前途ある若者として、時期のこの町、いや! この日本を支えていく貴重な人材である!
諸君らには無限の可能性があり、それをどう活用するかは諸君ら次第である!
しかし、今後、必ず諸君らは大きな壁にぶつかるはずだ! そこで臆してはならない!
冷静に、自分の信じた事を貫きさえすれば、必ずや! 道は開かれるだろう!
一人で悩むのもよし! 周りを見渡して人の助力を借りるのもよし! それは、なんら恥ずべき事ではない!
周りを見渡してみてくれ! これだけの! これだけの人がいる! そして、仲間がいる!
諸君らがこれから進む道には、もっともっと多くの人たち! 仲間たちがいるだろう!
そして! 仲間は必ず! 力になってくれるだろう! 『三本の矢』という話がある―!」

向かって、式が始まって、校長の話を聞いているのはいいんだけど・・・
「なげぇ・・・」
つい本音がこぼれた。
いや、しかし、本当に長い。一体どれだけ喋れば気が済むんだ、このおっさんは。
その時、視界にいた女の子が、ガクッと力なく膝から崩れ落ちた。
ほら、貧血で倒れる子まで出てきちゃったじゃないか。
誰でもいいから、おっさんの話を止めてくれ・・・。
「んがぁ~・・・スピー・・・」
・・・浩二の奴は式が始まって開始5分で爆睡してしまったようだ。立ったまま・・・。
「器用な奴・・・」
そう呟いた時、今度は明日と目が合った。
何やら怒りに満ちた顔をしているが、なんだ? 今朝の事を根に持ってるのか?
しかし、明日はそんなネチネチと後に引きずるような奴じゃあない。
となると、考えられる事は一つ。
「このおっさん、話が長いのよ・・・」
やっぱりそうだった。
「だよな。本当に長すぎだ。貧血で倒れてる子もいるのに、早く終わらせようと思わないのかな?」
俺は小声で明日に投げ返す。
「あの様子じゃ、自分の演説に酔いしれて、全く目に入っていないって感じね・・・」
二人して深い溜息を吐いた後、この拷問に近い所業から開放される事となった。
「―以上で! ワシの話は終了である!」
盛大な拍手に見送られ、校長は満足そうに壇上から降りていく。
・・・これが皮肉の拍手だとも気付かないまま。
そして、拍手の音に聴覚が刺激されたのか、浩二は目を覚まし、終わった?などと言っているが、
「まだ来賓の奴らの話があるから、もうちょっと寝られるぞ?」
と、浩二に投げかける。それに対し浩二は顔を輝かせ
「ホント?! ラッキー! じゃあ式が終わったら起こしてくれよな!」
と言って、再び眠りの国へと旅立っていった。立ったまま。
しかし、もう式は終わった。
今は皆がぞろぞろと体育館を後にしている頃なのだ。こんな状態にも気付かず立ったまま寝てるなんて。
「やっぱり馬鹿な奴だな」
そう思うと、少し可哀想になってきた・・・。
よし、後で先生に知らせてやろう。式中ずっと眠ってた、という事をおまけしてな。
その後、明日や琢弥なども浩二の横を通り過ぎて行ったのだが、やはりというか何というか、誰一人として、浩二を起こそうとはしなかった。不憫すぎる・・・。

そして、体育館を後にすると、目の前の校舎に大きな紙が貼り出されていた。
クラス割だ。みんながクラス割に群がって自分のクラスが何組かを調べていく。
あっという間に出来上がる人ごみ。
俺も、遠巻きに自分のクラスを探し始めた。
「お、B組か」
自分の名前を見つけた後、仲間たちの名前があるかを確かめる。

B組
柏原 浩二


月島 稔



響 琢弥


木下 明日


高階 京

・・・何たる偶然だろうか、全員同じクラスとは。
驚くと同時に、安堵と、騒がしくなりそうだな。なんて嬉しそうに思ってクラスに向かう。
向かう道すがら、俺は本当に安堵していた。
これで、無理矢理友人を作る意味は無くなった。
俺たちは5人で1グループ、5人で、1人なんだ。

他の奴なんて―

いらない。

更新日:2009-11-02 03:59:05

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