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夏休み

「それでは、みなさん・・・。よい夏休みを・・・」
うーん。そんな枯れた声で言われても全くトキメかないんだけど・・・。
でも、何はともあれ、今日で小休止か。
はぁ、と短い溜息を吐いて俺は目先の休息に思いを馳せた。

―夏休み、か。

やっぱり遊んで、更に遊んで、終わるんだろうな。それで、二学期間近で宿題に追われて焦る。
パターンだ。そういう光景が容易に想像できて苦笑してしまった。
3が並んだ通知表を鞄にしまいながら、青葉が茂る風景を、窓越しに瞳に焼き付ける。
夏休みは明日からだけど、浩二なんかは今日から言うんだろうな。
『どこで遊ぶー?! 決めないんだったら、俺が行きたいとこに引っ張って行くからなー!』
なんて。
俺は帰り支度を済ませ、教室内を見回した。
皆、もう帰り支度は終わっているようで、一箇所に集まっている。
俺はその輪に加わるべく、席を立った。
そして、その輪に加わって、教室を出ようかという所で浩二が口を開いた。

「どこで遊ぶー?! 決めないんだったら、俺が行きたいとこに引っ張って行くからなー!」

お約束だよね。ていうか、それも毎度のパターンだ。
勿論、それが毎度のパターンなら、返す言葉もパターン化されている訳で。
しかもそれは俺の役目な訳で。
「待て待て! 今日は皆でカラオケだろ! 一学期お疲れ様会だ!」
「本当に、お決まりね」
それに京が笑いながら答えた。
楓だけは『お決まり』の意味が分からず、楽しそうな顔をしながらもキョトンとしていた。
それに皆が口を揃えてタネを明かす。
「中学くらいから毎度このネタをやってるんだ」
聞いた楓は合点がいったような顔になり、更に顔を輝かせる。
自分も完全に仲間に加われた。そんな嬉しさに満ちた顔だった。
裏を返せば、今まではどこか壁を感じていた事もあったんだろう。
しかし、この恒例行事に加われた、という事は楓にとって、垣根が完全に取り払われたと思うに十分だったんだろう。

「さ! じゃあ一学期の溜まりに溜まったストレスを発散させるわよー!」
元気よく明日が号令をかける。通知表を見ながら固まっていた事なんて、もう忘れたかのような振る舞いである。
「ストレス? あったの?」
「当然でしょ! 毎日面白くもない授業を受けて、ストレスが溜まらない方がおかしいわよ!」
申し訳無さそうに、こちらを見遣る浦部の姿が見えた気がした。そんな気がした・・・。
「毎時間しっかり寝てるのにストレスって溜まるのか?」
馬鹿が馬鹿に馬鹿な事を言って馬鹿力でこの馬鹿と殴られた。
馬鹿同士の会話は実に面倒くさいな。
「まったく、毎時間寝てるのは浩二もでしょ!」
俺は馬鹿にはなりたくないので、心の中でツッコミを入れた。
『怒る所はそっちかよ!』と。

更新日:2009-11-11 02:04:15

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