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友達

桜が咲き、乱れる。そして太陽は暖かく大地を照らしている。
電線を止まり木にしている雀が、美しくも聞きなれた声で歌う。
そんな春麗らかな気候の朝、男はアパートの一室にいた。

ピピピッ!ピピピッ!ガシャンッ!

「ふ・・・あぁ~~あ・・・朝か・・・」
目覚まし時計を乱暴に止め、だらしなくあくびをするこの男は

月島 稔(つきしま みのる)

後光学園に通う平凡な男子だが、学園に入学をした際に一人暮らしを始め、今はかなり悠々自適な生活を送っている。
決して、親とそりが合わないとか、勘当を受けた身であるとかではない。
ただ、憧れだっただけ。
一人暮らしに憧れを抱いた少年であっただけなんだけど、二つ返事で承諾した両親を見た限り、実家に居ても悠々自適である事には変わりなさそうだ。
「んー・・・眠い・・・」
どうやら朝は苦手らしい。
そんな事なら実家に帰れよ! なんて思うかも知れないが、稔の青春の波動はその程度の障害では勢いを止める事は出来ないらしい。
ふらふらと立ち上がった稔は、その足でまず、トースターにパンを放り込み、コーヒー用にお湯を沸かし、洗面台に向かって顔と歯を綺麗にする。
顔を洗ってしまえば朝の眠気は吹き飛ぶようだ。
「あー、今日から学校かぁ、気合入れていかないと」
そう、今日は始業式。昨日までは春休みという事で多少リズムが崩れている自分に喝を入れる。
「ま、今日は式だけで、授業は無いからまだマシか」
自分に入れた喝を速攻で跳ね返す稔だったが、昨日まで遊び倒していた友人の顔を思い浮かべて、思い直す。
「いや・・・、やっぱり今日から気合を入れとかないと・・・」
思い直しているうちに、トースターが『チンッ』なんて小気味いい音を響かせて、こんがりと焼けたパンを吐き出した。
時計を確認してパンを頬張りながら、「もうすぐか・・・」なんて呟いた。
それからパンを平らげ、学園の準備をしながらコーヒーを飲んでいると・・・

ピンポーン

来たな。なんて思いながら溜息を吐く。

ピンポンピンポンピンポーン!
ピーーーーーーーンポーーーーン!

しつこいくらいの催促のチャイムを半ば無視し、手早く準備を済ませた稔は、玄関を開け、犯人たちに一言投げつける。

「起きてるから! それに近所迷惑になるからソレやめろって!」
注意を投げつけるのも、もうお決まりなのか、犯人たちはその声を無視し、自分たちの気持ちを端的に述べる。
「おいーっす! 元気にしてたかぁ?」
昨日も遊んだだろ。なんて内心で呟くと、もう一人の犯人が口を開く。
「よお、ちゃんと起きてたみたいやなぁ。お兄ちゃんは嬉しいぞ?」
なんて、まるで俺が『寝坊』なんて犯罪を犯す奴みたいな発言をかましてくれた。
「黙れ犯人。とりあえず、チャイム連打するのは迷惑だからやめろよな?」
もう一度強く念を押す稔。それに犯人たちはやはり悪びれた様子も無く
「次から気をつけまーす」
なんて間延びした声で発した。
こいつら、絶対分かってないな。なんて稔は思いながらも、次の犯人の発言で事態は急変する。
「そんな事より、あいつら待たせとったら後がうるさいで?」
もう一度時計を見る。時刻は待ち合わせ時間の少しだけ前―。

やばい―!

殺られる―!

「そうそう! パパッと行こうぜ! なんたって、女子が! 俺を! 待ってるんだからな!」
ビシィッとポーズまでとってアピールする気持ちの悪い犯人を完全に無視して、稔たちは待ち合わせ場所へと急ぐのだった。

更新日:2009-11-01 03:36:42

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