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教授と俺の退屈。

目を覚ますとベッドの上で寝ていた
壱「夢…ですか?いや、これは夢ではないですね。だって私は寝ませんから」
起き上がり服を見ると寝巻きを着ている
壱「ふっ…いやいや、この様な服を着るのはいつぶりでしょうか」
笑った後指を鳴らす
服が執事服に変わる
壱「さぁ急ぎますよ、マスターの元まで」
そう言うと身を翻して音もなく姿を消した

時を同じくしてそれぞれの居るべき場所で各々は目を覚ましていた
夢だ
なんて片づける人は誰一人いなく
それは当たり前のように悪夢をみた後の安堵感に似た感情だった
薄暗い部屋の中、嫌な汗を流し目を覚ます
暗いのはカーテンを閉めているからではなくて、まだ日が昇っていないからだと
、目覚めの頭は直ぐに理解した
幸いジャージを着ていた
二階から降り居間に向かう、乱雑に脱がれたパーカーを掴み誰もいない家を出る
まだ朝は冷える
扉を開けると押し寄せる朝の風に手に持ったパーカーを着る
鍵をかけ息を吐く
白くなるほど今朝は冷え込んだらしい
?「本日は記録的な冷え込みらしいですよ」
確認できないが居るのは分かっていた
俺「確かにな、だって俺の口から煙でてるもん」
?「それは煙ではありません。しかし日が昇ればこの寒さも直に無くなります。
おはようございます。マスター」
俺「あぁおはよう、じゃあ早速だが…」
壱「かしこまりました」
後部座席の扉に手をかけ開ける、そこに招かれると無言のまま座る
座るのを確認すると丁寧に扉を閉める
運転席に座った壱はバックミラーを手で動かし俺と目が合う
壱「それでは出発いたします」
朝からさわやかに笑顔を向けてくれる。なかなかだな、と思わず笑い返していた

満足そうに微笑むとキーを回す
黒塗りの高級車は低いうねりを上げて滑るように走り出した
腕を組んで脚も組んで目覚め前の町を横切っていく
転々と街灯が道を照らしている
誰もいない街
誰も通らない信号
つまらなそうに眺めた外の景色が止まる
前を見ると信号が赤になっていた
車一台通らない道の先に歩く人を見つける
信号はなかなか変わらず
姿を確認できるまで停車したままだった
俺はそいつを知っている
助手席の扉を開け入ってくる
俺「おはよう笹蒲」
笹蒲はこちらを見るとうなづく程度会釈をした
そしてビニールのこすれる音をさせて取り出したのは缶コーヒーだった
笹「はい、マスター」
コンビニで買ったのだろうか
まだ熱いぐらい缶は外よりはましな程度の温度の車内にはありがたいものだった
俺「あったけぇ、ありがとう笹蒲」
素直に感謝していた
笹「はい、壱」
そういい顔に付ける
全く反応しない壱
笹蒲は首を傾げる
壱「笹蒲?何をしているんですか?」
信号はとっくに青に変わっていた
踏み込み走り出す
俺は思わず笑ってしまった
壱は結構怒っているようで笹蒲は笹蒲でつまらなそうにしているのを見て、笹蒲
が何をしたかったのか分かった
笑った声をかき消すように壱が答えを言った
壱「さ、笹蒲?なんで冷たいんですか?」
笹蒲はそれを分かっていて反応しない壱が信じられないような目でまじまじと見
つめ
ふぅと溜め息を吐くとまたビニールを鳴らし新しい缶コーヒーを出した
笹「はい、壱の分」
次は暖かかったのかほっとしたように缶コーヒーを収納されていたホルダーに収
めた
俺「じゃあ冷たいのはどうするんだ?」
そう言うと笹蒲はこちらに顔を向ける
頭の上で指をくるくる回して言葉を探しているようだった
しかし端から見たらアホな子だ
笹「冷たい物を摂取した場合…冷たい物の周りには熱が発生して…それで…」
うーんと唸ってしまった笹蒲、言いたいことは何となくわかる
俺「簡単に言うと?」
笹「…猫舌?」
だ、そうだ
それは簡単すぎないか?
コーヒーに誰も口を付けていない間に車は止まった
壱「到着しましたよ」

更新日:2010-03-22 02:40:31

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