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大晦日の出来事

ついに2032年も、残すところあと数時間となった。
今日は、大晦日である。
わが寺山家も、何とか年越しの準備を終えることができ、
あとは、そばをすすりながら、歌合戦が始まるのを待つだけとなった。

「ねえ、ママ。
 明日、渋谷の901で、200個限定福袋のセールがあるんだって。
 ねえ、絶対行こうよ、行こうよ~」

妹のさゆりが甘えた声で、母上にしつこくねだっている。
え~い、わがまま娘め!
毎年わが家は、元旦には東洋大観音へ初詣に行くことが、恒例になっているではないか!

「おー、たまにはそういうのもいいなあ」
親父が、考えられない一言を発した。
「やったー! じゃあ、これで決まりね」
さゆりが歓喜する。

何で、こうなるんだろう。
ぼくは、少し腹立ちまぎれに、テレビのリモコンボタンを押した。

「皆さん、あと8時間で新年を迎えようとしています」
テレビのアナウンサーがしゃべっている。
「お正月を楽しみにしている方も多いと思いますが、一方で、とても辛い気持ちを抱えながら、新年を迎えなければならない方もいます。一家の大黒柱を失って・・・」

何かのチャリティー番組だろうか?
親父の視線が、テレビに釘付けになった。


 


 

更新日:2009-11-18 15:54:35

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