• 3 / 75 ページ

祖母の思い

祖母がぽつりぽつり話し始めた。
「裕ちゃんは、おじいちゃんのこと、よく知らないよね。おばあちゃんだって、もう遠い昔のことのような気がする。でもね、裕ちゃんには、おじいちゃんのこと、もっともっと知っておいてほしいんだよ」

ぼくは、ちょっと意外な祖母の言葉に、戸惑った。
だって、何で今頃になって、急にそんな話が出てくるのか。

ぼくの、少し困ったような表情を察したかのように、祖母が話を続ける。
「そうよね。そんなこと突然言われても、裕ちゃんだって困るよね。おばあちゃんは、ありがたいことに、まだ元気だけど・・それでも、いつまで生きられるかなんてわからないし」
「最近、夢にちょくちょく、おじいちゃんが出てくるんだよ。あなた、おじいちゃんって声を掛けるんだけど、何にもしゃべらないの・・・ただ、ちょっぴり悲しそうな目をして、こっちを見ているだけなんだけど」

さらに、祖母の話は続く。
「裕ちゃんは、おじいちゃんがどういう亡くなり方をしたか、知ってるよね。そりゃあ、とっても辛いことがあって、おじいちゃんは可哀そうだった。けど、残されたおばあちゃんやパパだって、本当に大変だったんだから・・・・・・パパが裕ちゃんに、ほとんどおじいちゃんの話をしないのも、裕ちゃんの将来をうるさいくらいに心配するのも、無理ないことかもしれないねえ・・・」

そう言って、祖母はしばらく黙ってしまった。 

  



更新日:2010-01-17 10:25:44

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook