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ぼくの家族

ぼくは、寺山裕二。
エリート進学校として有名な、開海学園高校の2年生だ。
家族は、両親と中学3年生の妹、それから祖母の5人暮らし。

父は大手企業の管理職で、ぼくに発破を掛けるのが口癖になっている。
「裕二、おまえは将来何になりたいんだ? やりたい仕事は決まっているのか? 準備はちゃんとしているか? 成績はどのあたりだ?」

矢継ぎ早に質問が飛ぶ。
それが煩わしくて、ぼくは時々、祖母の部屋に避難する。
「ばあちゃん、ちょっとかくまってくんない?」
 
祖母は先週、70歳の誕生日を迎えたばかりだけど、まだまだ元気いっぱいだ。
「おや、裕ちゃん、またパパかい? おまえもいろいろと大変だねえ」

祖母の部屋には、小さな水槽がある。
ぼくは、親父の速射砲がおさまるまで、いつもその水槽を眺めることにしている。
ちょっと変わった水槽で、水草とエビしか入っていないけど・・・

あるとき祖母が、ちょっぴり寂しそうな顔をしながら、ぼくに話しかけてきた。
「ねえ、裕ちゃん。裕ちゃんは、パパからおじいちゃんの話を聞いたことがあるかい?」

ぼくは、祖父のことをよく知らない。
親父からも、祖父の話はほとんど聞かされていない。
ぼくが生まれた時、既に祖父は亡くなっていた。
知っていることといえば、祖父は、40代の時に自殺してしまったということ・・・

更新日:2009-12-16 13:14:49

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