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元日の朝

元日は、朝早くから両親とさゆりが渋谷に出かけたため、家で祖母と二人きりになった。
祖母も誘われていたようだが、今日は気を遣って、遠慮したようだ。

リビングに降りてみると、祖母がひとり、ミルクティーを淹れていた。
「ゆーちゃん、今頃ママに、思い切り甘えているんじゃないかねえ。
 高校受験を控えて、毎日勉強・勉強で、結構きつそうだったからねえ」

そうなのか・・・あんまり気付かなかった。

祖母はさゆりのことを、”ゆーちゃん”と呼ぶ。
ぼくも”裕ちゃん”だから、ちょっと紛らわしい。

ぼくは、祖父の日記のことを、祖母に話すべきかどうか、まだ迷っていた。
いずれは、話さなければならない時が来るだろうと覚悟しつつも・・・
ただ、その前に、ぼくの中で、祖父に対する気持ちを、整理しておきたかった。

「おじいちゃんって、どんな人だったの?」
自分でも意識しないまま、祖父のことを尋ねていた。
「そうねえ、優しい人だったねえ。浩のことを溺愛していたし、とっても家族思いで・・・。それに、責任感の強い人だったねえ。仕事にも真剣に取り組んで・・・。ただ、一途過ぎたのかもしれないねえ。回りが見えなくなってしまって、余裕が無くなって、発作的にあんなことをしてしまったんだろうねえ・・・」

「ばあちゃん、ごめん。辛いことを思い出させちゃったね」
「いいんだよ、裕ちゃん。今は、みんなのおかげで、幸せに暮らせているし。
 ただ、じいちゃんが亡くなってからしばらくは、そりゃあもう大変だったよ。
 浩がまっすぐに育ってくれたのが、何よりうれしかったねえ。
 パパはとっても、えらかったんだよ。
 本当にがんばったんだから・・・」

祖母の回想が始まった。


更新日:2009-11-18 15:58:02

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