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孤独なたたかい
少し緊張しながら、祖父の日記を開く。
(2007年4月9日 曇り)
新年度になったが、O課長の異動はなかった。
先が思いやられる。
彼との確執は、いつ頃から始まったのだろう。
私が提案した融資の件を、彼が頭ごなしに却下した時からだろうか。
S商事は、小規模ながらも、堅実な経営をしていた。
社長は、仕事をグローバルにとらえ、会社の業績と共に、従業員の生活や地域への貢献も意識しながら、地道に会社経営を行ってきた。
その人柄ゆえ、人望も厚く、非常に信頼できる方だった。
たまたま、運が悪いとしか言いようのないミスのせいで、一時的に業績が落ちただけで、立て直すことは十分できたのに・・・あの融資さえあれば。
我々は、もちろん慈善事業をしている訳ではない。
むしろ、今後成長が期待される企業と、早い段階から関係を持っておくことが重要になる。
さらに、日本全体の景気を活性化させるため、その一翼を担うことも、我々の仕事である。
だから、S商事のような会社を、簡単に切り捨ててしまうような真似は、本末転倒の極みなのだ。
それなのに、O課長は、自らの保身のために、ほんの少しでも、懸念される要素があるものは、十分な検討もしないまま、却下を即決した。
私は、いくら話しても耳を貸さないO課長に見切りをつけ、A次長に直訴した。
結局、A次長は着任して間もないこともあり、O課長に押し切られたが、あれ以来、彼は、私や私の部下に対し、何かにつけて辛辣に当たるようになり、それが段々とエスカレートしてきている。
今後の出方次第では、私にも私なりの覚悟があるが・・・
確か、祖父は、どこかの銀行マンだったはずだ。
ぼくの目に、懸命に耐えている祖父の姿が、おぼろげに浮かんできた。
(2007年4月9日 曇り)
新年度になったが、O課長の異動はなかった。
先が思いやられる。
彼との確執は、いつ頃から始まったのだろう。
私が提案した融資の件を、彼が頭ごなしに却下した時からだろうか。
S商事は、小規模ながらも、堅実な経営をしていた。
社長は、仕事をグローバルにとらえ、会社の業績と共に、従業員の生活や地域への貢献も意識しながら、地道に会社経営を行ってきた。
その人柄ゆえ、人望も厚く、非常に信頼できる方だった。
たまたま、運が悪いとしか言いようのないミスのせいで、一時的に業績が落ちただけで、立て直すことは十分できたのに・・・あの融資さえあれば。
我々は、もちろん慈善事業をしている訳ではない。
むしろ、今後成長が期待される企業と、早い段階から関係を持っておくことが重要になる。
さらに、日本全体の景気を活性化させるため、その一翼を担うことも、我々の仕事である。
だから、S商事のような会社を、簡単に切り捨ててしまうような真似は、本末転倒の極みなのだ。
それなのに、O課長は、自らの保身のために、ほんの少しでも、懸念される要素があるものは、十分な検討もしないまま、却下を即決した。
私は、いくら話しても耳を貸さないO課長に見切りをつけ、A次長に直訴した。
結局、A次長は着任して間もないこともあり、O課長に押し切られたが、あれ以来、彼は、私や私の部下に対し、何かにつけて辛辣に当たるようになり、それが段々とエスカレートしてきている。
今後の出方次第では、私にも私なりの覚悟があるが・・・
確か、祖父は、どこかの銀行マンだったはずだ。
ぼくの目に、懸命に耐えている祖父の姿が、おぼろげに浮かんできた。
更新日:2011-02-15 16:00:43