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始まり

                         **
あれからどのくらい時間が―月日が経ったのか分からなかった。
目を覚ました時、僕は既に病院で治療を受けていた。
どのくらい眠っていたのか分からないし、医者に聞こうとも思わなかった。
ただ体が疲れていて―あちこちが痛くて・・・何も考えられなかった。

それから数日、やっと体を起こせるようになった僕は、隣に修羅達がいることに気付いた。
修羅と零次は、またいつものように笑っていた。
重傷―集中治療室行き間違いなしだと思われていた湊は、脅威の回復力を見せていた。
包帯はまだしていたが、もう自由に動き回っていて、煙草も吸っていた。

あの後のことは、その時初めて修羅から聞いた。
近くに待機していた総が、あの場は処理をしてくれたらしい。
凛狛の姿は勿論何処にもなく、焼け野原のような駐車場が残っていただけだったという。

ふと、それを聞いて思った。
何故、あの距離から爆発を受けた僕達を生きていたのか。
「おそらく・・・一部だけは変えず、本来の能力を維持したままにしたのだろう。爆発は間違いなく『抑制的』なものだ。だからそれは促進され、異常なまでの盾となる。・・・それで俺達を守ってくれたのだろう。香輝さんらしい守り方だな」
窓から視線を逸らさずに、湊がそう語ってくれた。

ありがとう―きっとその言葉では足りない。
どんなに感謝したって―父はそれをこえるほどのものを、いつだって僕にくれるのだから―・・・。

                         **
「行っちゃうの?」
僕は驚きに声を上げた。

更新日:2009-12-18 19:21:35

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