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覚悟
**
店の中に入ると、静かな音楽が僕達を迎えてくれた。
思っていたよりも綺麗で、不思議と心が落ち着く―まるで我が家のような温かさがあった。
「いらっしゃいませ。四名様で宜しいでしょうか?」
カウンターの中から、黒縁メガネをかけた男性が、指を四本立てた。
零次が明るく、「そうでーす!」と声を返すと、慌てて別の男性が出てきて、案内してくれた。
僕達は、一番奥の窓の傍にある席に腰を下ろした。
「何食べようかな~♪」
座った瞬間、零次が素早くメニューを開いた。
「まあ、時間はある。ゆっくり決めればいい」
湊は窓枠に頬杖をつき、外を眺めながら呟いた。
既に奴を探し始めているのだろうか。湊の隣に、自然な流れで座り込んだ僕は、彼の横顔を見つめた。
ワン・スロータァが来る―それは間違いないのだろうか。
もしそれが、只の予感であるのならば、それに越したことはない。
だが、湊の真剣な横顔が、そうではないことを物語っているような気がした。
「いらっしゃいませー!」
生き生きとした、スタッフの声が店内に響き渡った。
同時に僕の心臓は、どくんっと大きく脈を打つ。
すぐにそちらの方を見遣ると、スーツに身を包んだ若い男性が入ってきた。
あの若さ、あの慌てよう―おそらくまだ社会人になったばかりの人間だろう。
男性は、腕時計を何度もちらちら見遣っている。そのせいでイスの足につまずき、転んだ。
「大丈夫ですかっ!?」と言いながら、スタッフが駆け寄っていく。
僕はほっとして、イスの背もたれに寄りかかった。
あいつが、あんな隙だらけの人間になるわけがないじゃないか。夢で見た奴の変身は、もっと隙の感じられないものだったはずだ。
「ちょこ、早く決めろよな」
零次が僕の目の前に、メニューを突き出した。
「・・・ごめんね。ぼーとしてたよ」
僕はメニューを受け取った。
店の中に入ると、静かな音楽が僕達を迎えてくれた。
思っていたよりも綺麗で、不思議と心が落ち着く―まるで我が家のような温かさがあった。
「いらっしゃいませ。四名様で宜しいでしょうか?」
カウンターの中から、黒縁メガネをかけた男性が、指を四本立てた。
零次が明るく、「そうでーす!」と声を返すと、慌てて別の男性が出てきて、案内してくれた。
僕達は、一番奥の窓の傍にある席に腰を下ろした。
「何食べようかな~♪」
座った瞬間、零次が素早くメニューを開いた。
「まあ、時間はある。ゆっくり決めればいい」
湊は窓枠に頬杖をつき、外を眺めながら呟いた。
既に奴を探し始めているのだろうか。湊の隣に、自然な流れで座り込んだ僕は、彼の横顔を見つめた。
ワン・スロータァが来る―それは間違いないのだろうか。
もしそれが、只の予感であるのならば、それに越したことはない。
だが、湊の真剣な横顔が、そうではないことを物語っているような気がした。
「いらっしゃいませー!」
生き生きとした、スタッフの声が店内に響き渡った。
同時に僕の心臓は、どくんっと大きく脈を打つ。
すぐにそちらの方を見遣ると、スーツに身を包んだ若い男性が入ってきた。
あの若さ、あの慌てよう―おそらくまだ社会人になったばかりの人間だろう。
男性は、腕時計を何度もちらちら見遣っている。そのせいでイスの足につまずき、転んだ。
「大丈夫ですかっ!?」と言いながら、スタッフが駆け寄っていく。
僕はほっとして、イスの背もたれに寄りかかった。
あいつが、あんな隙だらけの人間になるわけがないじゃないか。夢で見た奴の変身は、もっと隙の感じられないものだったはずだ。
「ちょこ、早く決めろよな」
零次が僕の目の前に、メニューを突き出した。
「・・・ごめんね。ぼーとしてたよ」
僕はメニューを受け取った。
更新日:2009-11-28 13:18:25