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「すいませーんっ！」
二度目の声と共に、ドアをノックする音が聞こえた。
やる気のなかった声が、ほんのわずかに苛立ちを含んだ。
修羅と零次が顔を見合わせ、湊へと視線を送る。
湊はじっと玄関を見つめ、何かを探っているように感じた。
しばらくの沈黙が僕達の間に流れる間も、やる気のない声は続き、ノック音にすら、苛立ちを込め始めていた。
僕はなるべく物音を立てないようにし、湊の横へと移動した。
「・・・出ないの？」
聞こえたどうか分からないような声で、僕は尋ねた。
「・・・声は一つだが、気配が複数ある」
湊は少しだけ僕の方に体を倒し、答えた。
「・・・複数ってどういうこと？宅配便じゃないの？」
僕も少しだけ湊に体を近づけ、玄関を見遣る。
例え宅配便じゃなかったとしても、ワン・スロータァであることは考えにくい。奴は一人しかいないし、まさか気配までも分身出来るなんてことはないだろう。
だとしたら・・・目の前に潜む連中は何だ？
突然、湊の顔がこちらを向き、僕は咄嗟に首を縮めた。
「・・・お前が出ろ」
「えっ？」
僕は即答とも思える速さで、間抜けな声を上げてしまった。
僕が出る？この家の住人じゃないのに？いや、それ以上に相手は複数いて、何者か全く分からないのに？
「・・・まさか・・・僕を犠牲にするんじゃ・・・」
「アホか。俺が後ろから攻撃をしかける。ドアを開けたらすぐにしゃがめ」
湊の無感情を感じさせる顔が、一瞬だけしらけた。
僕は渋々頷くと、「はーい」と言葉を返しながら、玄関のドアを開けた。
そして素早く僕がしゃがんだのを合図に、戦闘は開始された―。