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記憶

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僕達を乗せたバイクは、やがて怪しい雰囲気満載の一軒家の前で止まった。
目の届く範囲には人家は一軒もなく、その家は、身を震わせる木々で覆われていた。ぱっと見では、木々で隠れていて、家があるか疑うところである。
「・・・ここは?」
重い体に顔をしかめ、僕はバイクを降りた。
「ここか?俺の家・・・・とは言いにくいが、俺の家なのだろう」
ヘルメットを外しながら、男は素っ気無く答えた。
どっちなんだよ・・・なんて下らないことを思いながらも、僕は奇妙な家を見上げた。
窓は雨戸で閉められていて、外からは一切中を窺うことが出来ない。二階の窓から僕達を見下ろしているのは、望遠鏡だろうか?
確かに、家とは言いにくいものだった。どちらかというと「アジト」という感じである。
「入れ」
男は僕の頭を小突くと、さっさと家の中に入っていく。
僕も零次に体を支えられ、家の中へと足を踏み入れた。
第一印象は「暗い」ということであった。雨戸を閉めているので、当たり前といえば当たり前なのだが、それだけではない「何か」が、この空間を暗くしているように思えた。
辺りを見回しながらも、僕達はどんどん家の中へと入っていく。
「座れ」
男はソファを顎で示すと、自分はその向かい側に腰を下ろした。
僕達三人は、黙って言われたとおりにした。修羅は気を失っているようで、その横にある白いソファに寝かす形になったが。
どんっと、男が何処からか救急箱を取り出し、机の上に置いた。
「まず、手当てをする」
話はそれからだと、男の瞳が続けた。




更新日:2009-11-10 18:53:17

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