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奥田英朗と角田光代の新人賞選考

 またまた奥田英朗さんです。今回は角田光代さんと共に選考委員を務めた、小説宝石新人賞選考のインタビュー記事について触れてみます。 
 

 現在は第6回を募集中の小説宝石新人賞ですが、その第1回目と2回目の選考委員をお二人が勤めました。作品の方向性が漠然としていて、選考作品のジャンルが様々な中で、小説を書く上での客観性について度々言及した奥田さんのお話を掲載します。


――自分の体験したことを書いているんですね。もうちょっと客観的に書くことによって小説の深みが出るんですが。要するに、作者は引っ込んでいろというのが全体に言えることなんですよね。あなたがどう思おうが、読者は興味がないんです。読者の求めるものは、作者の考えじゃない。それだけは、くどいくらいに言っておきたいですね。他人に対する興味なんて、人間はほとんどないんですよ。だから、その中で面白い登場人物を生み出さねばならない。
 全部について言えたのは、魅力的な登場人物の乏しさですかね。共感できるキャラクターがいなかった。小説は、やっぱり登場人物なんですよね。人物描写があまりにもないがしろにされているというか。人物造形を考えてやっていただかないと。


 いや、まったく、他人は自分のことには興味ないですよね! 人の話はバサっと切り捨てて、自分の話しに持っていこうとするのが人間です。
 

――自分のことを書いているんだろうなというのがありありとわかって、そうすると、次にどうするんだろうということを考えるんですね。女心を綴るのは芸が要るわけですよ(笑)。一言でこれはセンチメンタリズムですよね。しかし、作者の感傷なんですよ。主人公の感傷ではなくてね。作者の感傷に、なぜ読者が付き合わなければならないのか。厳しいことを言うようですが。私は、真っ先にそれを思ってしまったんですね。この人は、実際に看護師なんじゃないかな。
 文章はちゃんとしています。最終選考に残っただけのことはあります。ただ、もう少し言葉を的確に1つ1つ書かないと。
 自分から一旦離れて小説を書いてみてほしいですね。作者に読者がどれほど興味を持つかというと、持ちはしないわけです。私にだって、持たないですよ。どんなベストセラー作家でも、エッセイを出したら売れない。やはり、そこで作者は我に返るわけですよ。「あっ、皆俺になんか関心ないんだ」という。そういう経験を積んで、だんだん客観的になっていくわけですよ。


 エッセイは売れないのでしょうか? でも、そういうことを言いたいのではないのでしょうね。だって、奥田さんはエッセイも面白いもん!
 きっと、エッセイといえども、読む人のことを考えて書けと言いたいのでしょうね。プロならば。


――ストーリー以前に小説のルールとして、裁いてはならないというのを言っておきたいです。言いたいことはぐっと堪えて物語にするというのが小説の基本的な作法なんですね。
 細かいことで言えば、登場人物をどんどん削っていったほうがいいですね。重要でない人は男とか女とか、あだ名とか。名前をつけると印象に残るから、いきなり「満室」になっちゃうんですよ。
 この「波風」の作者と、「影踏み」の作者にぜひ言いたいのは、自分じゃない人をまず書いてみてほしいということ。自分から書くと、その先、どういう引き出しがあるのか、こっちもわからないから、自分の引き出しがあるのは、それは最後まで取っておいたほうがいい。氏素性を明かされなくても、読んで容易にわかるんですよ、自分のことを書いているというのが。自分を誰か他人の視点で描くとかね、この主人公は絶対に自分だから、そうすれば、自分がどう見られているのか、客観的に描ける。


 う~ん、耳が痛いですね……。客観的な視線、意識します。すいません。

更新日:2010-12-04 11:28:13

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