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休憩時間2 人物の表現

 人物の特徴を表そうとすると、《すらりと伸びた足》だの《こぼれ落ちそうな大きな瞳》、《透けるような白い肌》などっといった、ありきたりな表現になりがちです。
 いったい、作家の先生方はどのような表現で人物を表現しているのでしょうか?
 今回はちょっと一休みして、人物の表現を抜き取ってみたいと思います。


 昔ながらの意味では図抜けた美男子と言えないまでも、四十五歳のラングドンには、女の同僚が“理知的”と評する魅力があった。豊かな茶色の髪に交じる幾房かの銀髪、好奇心に満ちた青い瞳、人の心をつかむ深い声、運動部の学生のように力強く屈託のない笑顔、高校と大学で飛びこみ競技の代表をつとめ、いまなお水泳選手並みに引きしまった六フィートの体を、大学のプールを一日に五十往復することで油断なく維持している。
 友人たちからは、時代の狭間に生きる謎の人物と考えられていた。週末には、青いジーンズ姿で学内の中庭をそぞろ歩きしながら、学生を相手にコンピュータ・グラフィックスや宗教史について議論する姿が見られる。ハリス・ツイードの上着とペイズリー柄のベストに身を包んで、美術館の創立式典で講演をしている写真が、高級美術雑誌のページを飾ったことも何度かある。
――ダン・ブラウン「天使と悪魔」のロバート・ラングドン


 兄の贔屓目で言うのではなく、春の外見は人並み以上だった。通りすがりの者の視線を、女性に限らず男たちの目も、集める。鋭さを備えた眼に、官能的な曲線を描く涼しげな眉、鼻は高く勇ましさもある。美男子と言うほど軟弱ではなく、寡黙でありながらも敏捷な獣、たとえば豹さながらの力強さが滲んでいる。顔は小ぶりで、腕が長く、そのアンバランスな体型が、現実味を失わせ、言い方を変えれば魅惑的だった。
――伊坂幸太郎「重力ピエロ」の春


 この二人は、いわゆる“イケメン”の部類に入る人たちです。
 二人とも外面のみならず、内面の知性を武器にしているため、読者を文句なく惹きつけます。ラングドンは“人の心をつかむ深い声”や“屈託のない笑顔”に表されているように、年齢に比例した人格的な深みがあり、温厚な性格を物語っています。
 一方、春は“鋭さを備えた眼”、“豹さながらの力強さ”などに表されるように、攻撃的な一面をも感じさせます。
 どちらにしても、魅力的ですね。
 次はもう少し普通の人たちを見てみましょう。


更新日:2010-08-08 15:51:40

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