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冲方丁のライトノベルの書き方講座

 近ごろ、冲方(うぶかた)丁(とう)さんの「天地明察」という本が本屋大賞に選ばれました。この作品はライトノベルではなく歴史小説で、養老孟さんだの、高橋克彦さんだの大作家が挙って評価した素晴らしい内容の本のようです。

 私は今までライトノベルを読んだことがなく、一度読んでみたいと思っておりましたが、1冊目をどの本にするか躊躇しておりました。なぜなら、文章力の違いに格差があるジャンルだということをよく聞くので。そこで、本屋大賞を受賞するような方の本なら、初めて読むには最適なのではないかと思い、冲方丁さんの比較的短めな「微睡みのセフィロト」という本と、「冲方丁のライトノベルの書き方講座」を買って読んでみました。

「微睡(まどろ)みのセフィロト」は、ライトノベルというよりSFと言った方がピッタリ来るような、圧倒的な世界観を持つ本格的な小説です。第四次元感応者(フォース・ディメンショナー)と呼ばれる、超能力者たちと、第三次元感覚者(サード・ディメンショナー)と呼ばれるそういう力のない普通の人々の間で戦争が起き、多くの人間が死滅します。感応者(フォース)の力は圧倒的で、生きた人間を小さな立方体に裁断し、更にゼリー状になり溶けたまま生き続けるという状態にします。多くの感覚者(サード)は彼らに恨みを持ち、フォースとの関係に冷戦状態が続くなか事件が起きるのですが、中身に関しては興味ある方はお読みいただきたいと思います。

 この本を読むと、まずネーミングセンスの良さにまず驚きます。調べてみると冲方さんは、幼少の頃シンガポールやネパールで過ごしていらっしゃるので、語学に堪能なのです。世界政府準備委員会にリヴァイアサンとルビを振り、混断と書いてシュレッディング、緒感でエモーションなどと読ませ、一般的に使われる言葉ではないので何度もページを戻って読み返すため、200ページ位でも読み応えがあります。

 ところで、世界政府準備委員会を英語でいうと、もちろんリヴァイアサンではありません。強いていうならば、ザ・ワールド・ガバメント・アレンジメント・コミッティーとか。それで何だかすっきりしないでいると、しばらくしてから“複雑怪奇なる化け物”という表現にリヴァイアサンとルビを振っているではありませんか! もちろん、“複雑怪奇なる化け物”の方は物語中に世界政府準備委員会を皮肉って言っているのですが、これで何だか納得がいきました。

「微睡みのセフィロト」はこれくらいにして、「冲方丁のライトノベルの書き方講座」に移りましょう。

更新日:2010-05-29 17:22:37

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