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若きウエルテルの悩み

 主な登場人物は、主人公のウエルテルという青年と、彼が心を寄せる美しきロッテ、そしてそのロッテの婚約者(物語が進むと、結婚します)アルベルトの3人です。

 恋愛関係のイザコザに巻き込まれたウエルテルは、心の整理をするために実家から離れ、自然に恵まれた田舎でひと時を過ごします。そこで出会ったロッテに一目ぼれし恋に落ちるのですが、最初はとてもいい友人関係にありました。

 ゲーテは、ウエルテルの性格をこのように表現しています。

――多少身分のある連中は、いつだって下層の人たちとの間に距離を置いて冷然と構えている。近寄ったら損をするといった具合なんだね。

――この世の中で子供らほどぼくの気持ちに近いものはないんだ。

 ウエルテルは、これらのことからもわかるように、人種差別を憎む正義感の強い性格で、子供や素朴な身分の低い人たちが好きな、純真な人と言えます。



――この男が仲間入りをしたがらないのは知恵のなさからじゃなくて、頑迷で不機嫌だからなんだ。

――むしろこの不機嫌というものは、われわれ自身の愚劣さにたいするひそかな不快、つまりわれわれ自身に対する不満じゃないんですか。また一方、この不満はいつもばかげた虚栄心にけしかけられる嫉妬心と一緒になっているんですよ。

 そしていつも、不機嫌な人に対して敵意を抱いています。不機嫌な人というのは、つまり相手に対する思いやりのない態度、ブスッとしたり睨んだりする表情や、失礼な言葉遣いといったことでしょう。そういった態度をしないよう自分自身が常に心がけているために、よけいに他人の無礼が許せないのかもしれません。



――とにかくぼくはアルベルトに対して尊敬を拒むことはできない。彼の落ち着いた態度は、ぼくの性格の落ち着きのなさと実に好対照をなしている。

――ぼくはどんなにアルベルトが好きでも、この「しかし」には辟易する。だってわかりきっているじゃないか。どんな一般的命題にだって例外というものはあるってことは。ところがこの人は実にどうも正式なんだね。

 自分でもいっているように、ウエルテルは落ち着きがありません。どちらかというと、子供っぽい、夢見がちな性格です。それに対して宿敵アルベルトは、いつも冷静で、ウエルテルに対しても失礼な行動を取りません。
 ウエルテルは、この素晴らしい非の打ち所のないアルベルトには勝てず、自分の気持ちを持て余し、次第に追い詰められていきます。


 このように、ゲーテは誰にでも共感できそうな瑞々しい感性の青年を描いていますが、この話しは自身の恋愛体験を元に書かれています。

 それでは、ゲーテの恋愛遍歴について触れてみましょう。

更新日:2009-11-12 11:27:03

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